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2012年3月25日 (日)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」 連載2

ヤケクソとはこういうことを言うのだろうなどと、妙に冷静に分析しつつ、女の首を観察した。。さすがに触ってみる気にはならないが、死体ではないと直感した。目は閉じている。限りなく人間に近いが、3DのCGアニメのようにどこか人工的なのである。少しばかり勇気が出てきた昇は、保護材をすべて取り除いた。鋳型のようなホームドポリスチレンにピタッと収まった女の上半身が出てきた。腕だけが、一本ずつ薄い樹脂の保護材に包まれ、ワンセット並んで左横に添えられている。薄いブルーのTシャツを着ている。一呼吸置いて、そっと手を触れてみると、人間の皮膚の感触と良く似ているのだが、明らかに異質な感触があった。右側に、ビニールに入ったいくつかの機器とマニュアルのような冊子があった。昇は早速をそれを手に取り、そのまま床に座り込み、小さな字で書かれたマニュアルの文章に集中した。冊子の前書きには概ね次のようなことが書いてあった。

1、この機器はヒューマノイドロボット(Automatized.Yield.Android 2nd)愛称AYAⅡである。

1、現存するどのヒューマノイドロボットよりも高度な知能と機能を有している。つまり、人との自然な会話を行うコミュニケーション知能や、自律移動を実現する移動知能はもとより、感情を理解し、コントロールする知能も有する画期的なヒューマノイドロボットである。そして、その能力は未知数である。

1、試作機であるため、実際に使用し、モニターの必要がある。

そして、最後に次のような依頼文が添えてあった。

当研究所の独自の調査により貴殿がモニター報告者に選ばれた。この栄誉を誇りと思い、モニター活動に励んでもらいたい。しかし、このことによって貴殿が肉体的にも精神的にも何らかの損害を受けることは決してあり得ない。AYAⅡはヒューマノイドロボットであるため、定期的な充電以外の補給は一切必要ない。モニター報告も自動的に行われるため、特別に当研究所が指定した場合以外は、文書等での報告を求めることは一切無い。貴殿の平素の日常生活を妨げるものは何一つあり得ないばかりか、貴殿の生活に役に立つことも多々あるだろうことを確信している。今すぐ、マニュアルに従い、ヒューマノイドロボットのセットアップを実行し、モニタリングを開始していただきたい。 以上

「感情」というものを徹底して排除したマニュアルを読み終えると昇は小さなため息をついた。

「死体と比べれば、アンドロイドなんてこわくないよね。それにこの子はちょっと可愛いしね。」

さらに昇は思った。

「だいたい世の中なんて何が起こるかわからないものだし、情報番組のコメンテーターの言うようになんて世の中は動かないに決まっている。地震だって急に起こるし、五〇年以上続いている保守政権だっていつ交代するかわからないのだから、僕の家に突然アンドロイドが来たって別に不思議なことではないはずだ。でも、貴殿の生活に役に立つと言われても、僕は特に困っていることなんか何もない。すごくおいしいとは言えないにしても、料理だって出来るし、お寿司も握れる。アイロンがけだって上手に出来るし、掃除も決して嫌いじゃない。親しいガールフレンドもいるし、十分に満足とは言えないかもしれないけど、今の生活を楽しんでいる」

(つづく)

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