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2012年3月

2012年3月31日 (土)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」第二章 連載7

二人はフード付きコートを着てマンションを出た。もうそろそろ師走に近い深夜の気温はさすがに低く、夜気の冷たさを肌に感じる。オオカミでも吠えそうな満月が、南南西の空にその存在感を誇示していた。小高いマンションから市道に出て、コンビニまでの歩道を歩く。さすがにこの時間は、人通りもなく、時折、駅に向かう空車のタクシーと、駅から住宅街に向かうタクシーが通り過ぎていくだけである。

10分ほど歩くと、コンビニの照明が見えてきた。一台の車も止まっていない駐車場が異様に広く感じ、いっそう閑散としてみえる。近所の住人らしい、グレーのスウェットの上下の男が吸っていたタバコを入り口近くの地面に放り投げた。火はまだ点いたままであるが、男はそれを踏みつけようともしない。ズボンの後ろのポケットは財布の重みで垂れ下がり、ズボンの右側がずれ落ちそうである。分厚い靴下にサンダル履き。男は店に入る。

「天を仰いで唾するか……」

男を見ていた昇が呟く。

「ん、何?」

亜弥が昇を見上げて訊ねた。

「あいつのことさ。自分に返ってくるんだよ」

「何が返ってくるの?」

「火の点いたタバコさ」

ふーん、と、亜弥は面白そうに応える。

昼間は感じられない自動ドアの開閉音を十分意識しながら二人はコンビニの店内に入った。

カウンターに若い男の店員が一人、プリントアウトされた伝票の一覧をチェックしている。店内には客が三人。薄めの革ジャンパーを着た学生風の若い男、都心からの最終電車にかろうじて間に合ったと思われるスーツ姿のサラリーマン風三十代の男性、スウェットスーツを着たさっきの小太りの男。それぞれが目当ての品物を物色していた。

深夜のコンビニには不思議な魅力があると昇は思う。特に欲しい物がなくとも、深夜にコンビニの側を通りかかると、その明かりに誘われるように店に入ってしまう。昼間とは違う静かな店内に入ると妙に落ち着いて、さほど必要でもない雑誌や飲み物などを買ってしまうことが多い。同時に、こんな人の少ない所にコンビニ強盗などが入ったらどうなるのだろうなどと、時々見るニュースの場面などを想像してしまったりもする。強盗にとったら、こんなに入りやすい店はないのではないかなどと要らぬ心配をしてみたりする。

亜弥は、いつものようにひとつひとつの品物を覚えるかのようにじっと見ている。昇がフランスパンとヨーグルトと、昨日発売になったばかりのコンピュータ関係の雑誌を買い物かごに入れて、レジに向かおうとしたその時、バイクが店の入り口のすぐ前に止まった。上向きのヘッドライトがコンビニのロゴの間からギラッと光る。男がフルフェイスのヘルメットを被ったまま自動ドアに近づいてきた。バイクのエンジンは掛けたままである。昇は心臓が大きくドキッと打つのを意識しながら自動ドアを凝視した。亜弥以外の三人の客も一斉にそちらを見た。

自動ドアが不必要に大きな音を立てて開いた。180センチ近い男が入ってきた。着古した黒い革ジャンにジーンズ。柔らかそうな革手袋にスニーカー。不似合いな小さなデイバッグ。濃い灰色のフルフェイスにはスモークの風よけがついていて顔はまったく見えない。店に入ると、男は何の躊躇も無く、まっすぐにレジに向かった。店員が伝票を見ながら、マニュアル通りに

「いらっしゃいませ」

と、大声で言い、顔を上げて男を見た。フルフェイスを見ると、これもマニュアル通りに

「お客様、店内ではヘルメットを脱いでいただくこと……」

そこで言葉を飲み込んだ。そして、男の右手の拳銃を食い入るように見た。(つづく)

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やっぱり……!! 最後のスキーで大変なことに!!

やっと暖かくなってきたのですが、ふと、琵琶湖バレーのゲレンデ情報を開いてみると なんと!!

すべてのコースが○ではないですか!!

つい先日、タイヤをノーマルに戻したばかりで、「今シーズンのスキーは終わり」とけりを付けたはずですが、その決心がぐらつきました。

そして、翌日「決行!!」

ポカポカと暖かいドライブは気持ちよく、渋滞もなく1時間半位でスキー場に到着。

とても良い天気でした。下は気温10度、山頂ゲレンデは5度。特別サービス期間だそうで、いつもよりリフト券が600円安い。

雪質はさすがにシャーベット状態でしたが、前回よりは良い雪でした。

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リフトに乗ってもまったく寒くない!!

足馴らしにしばらは緩斜面で滑り、お昼に。

いつもの「ステーキプレート平日バージョン」

今回は、そろそろシーズン終わりのため、お肉が1.3倍増。うれしいサービスです。

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「今日で、今シーズン、ホントに最後だから思いっきり滑ろうー!!」

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などと欲を出したのがいけなかったのか、シャーベットの雪に足を取られ、ダイナミックに転倒!!

「あっ、頭打つぞー!!」と意識した瞬間、後頭部を打ち付けてしまいました。

その時は特にダメージは感じなかったのですが、やはり、翌日来ました。

首、肩が痛ーい!! 布団から起き上がれないくらい痛いのです。

「軽いむち打ち症です。あまり無理をしないようにしてください」との診断。

あーあ、やっぱり。

やっぱり、前回で終わりにしておけば良かった、と後悔したのですが、やっぱり、自分的にはケリがついていなかったのでしょうね。

でも、これで、すっかりケリがつきました。代償を支払いましたが……気持ち悪い

 

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また来シーズンまでさようなら。

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2012年3月29日 (木)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」第二章 連載6

<第二章>

11月もそろそろ後半に入ろうとしている。亜弥が昇の家にやってきてから二ヶ月近くになる。このコミュニケーション型ヒューマノイドロボットは、二ヶ月の間に目まぐるしい進歩を遂げた。他人とのコミュニケーションが苦手な最近の若者よりもずっと人間らしいなどと昇は思う。ぶっきらぼうな性格さえ何とかなれば申し分ないのだが、それも亜弥の性格であると、無理に矯正することもないのだと思ったりする。昇は、先月食べ損ねたフォートナム&メイソンのロイヤルローフを囓り、ミルで挽き立てのコーヒーを飲みながらぼんやりと考えた。窓から見えるプラタナスの葉は少しずつ落ち、楓も紅葉(こうよう)の盛りを過ぎ、辺りは少しずつ冬色に変わろうとしている。

一週間前の土曜日のことである。

ゆっくり目覚めた昇が、遅い朝食の準備をしようとキッチンに入る。そこには、すでに朝食を作っている亜弥がいた。いつもの彼女は、昇が頼まない限り食事を作ることがない。昇は、一ヶ月前のキッチンのあの惨状からまだ立ち直れていなかった。亜弥は、通常、昇と同じ時間に起きる。たぶん昇に合わせて体内時計をセットしているのだと思う。彼女は基本的に食事を摂らないが、昇と同じテーブルに座り、昇が食事をする様子を興味深そうに見ている。きっと、美味しいとか、まずいとかではなくて、そのプロセスや造形結果に興味があるように思える。普段、昇が食事の準備をしていると側から離れない。

「ねえ、お願いだから邪魔しないでくれる。隣でテレビでもみていてよ」

と、言うと「ふうーん」などと言って隣のリビングに行くが、テレビをつけたまま昇の様子をジーと観察していたりするのである。

先週買った薄ピンクのセーターに淡いラベンダー色のジーンズを穿いた亜弥が、キッチンでテキパキと食事の準備をしていた。

「どうしたの、へえー食事を作っているんだ。僕のために作ってくれてるの。ふーん」

と、昇が面白そうに言う。

「別に昇のために作っているわけではない。料理というものに興味があるから作ってみる。ただそれだけよ。でも、食べたかったら食べてもかまわない」

亜弥は笑いもせずに、チョコレート色の大きな瞳を昇に向けて言う。昇は大げさに手を広げて肩をすくませる。

「何を作ってるの」

「スクランブル・エッグと挽き肉&マッシュ・ポテト」

昇は、キッチンの白いテーブルに並べられたスクランブル・エッグと挽き肉&マッシュ・ポテトをおそるおそる味見した。そして、昇は驚いた。もし、亜弥に味覚というものがプログラムされているとすれば、それは、とても繊細で完成度の高いものにちがいないと感心した。挽肉料理を飲み込んで亜弥の方に目を向ける。昇の様子をじっと見ていたはずの亜弥がぷいと顔を背けた。わずかな期間に、あらゆるソースから知識や情報を取り込み、消化し、それが血肉となるように彼女を育む。亜弥は確実に進化している。

昇は極力亜弥といっしょに出かけることにしている。この優秀なアンドロイドに出来るだけ社会とコミットしてもらいたい。そのことによって、良いのか悪いのかよくわからないが、この社会のシステムに馴染んでもらいたいと思っている。

途中で簡単な夕食は済ましたものの、午後からズーと読み続けていた長編の文庫本を読み終えて時計を見る。壁の電波時計が深夜の一時を指していた。キッチンのテーブルに座ってSONYのウォークマンを聞いていた亜弥が昇の方に目を向けて聞いてきた。

「昇、もう寝るのか」

「いや、朝食のフランスパンとヨーグルトを買い忘れた。今からコンビニに行ってくる。亜弥もいっしょに行こう」

と、昇が誘う。(つづく)

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2012年3月28日 (水)

小説 アンドロイド 「AYA/2nd」 連載5

帰りにナム・プリックでお昼ご飯を食べて帰ろうなどと考えながらコンビニの前を通りかかる。制服は着ていないが、高校生風の男子が三人、店の入り口の横にべったりと座り、タバコを吸っていた。真ん中の男は痩せて背が高く、暗い目をしていた。右側の男は小太りで、高校生なのにすでにお腹が出ている。もう一人は小柄で、人を見下したような横柄さを感じさせる。三人とも一見普通の格好だが、全体から滲み出るある種の「くずれ」は隠せない。周りには彼らが飲み食いしたと思われるカップ麺の屑や、飲み物のペットボトルが散乱していた。昇は「やれやれ」と思いながら、珍しくもない光景を通り過ぎようとした。その時、亜弥がゆっくりと高校生に近づき、吸っていたタバコを一本ずつもぎ取ると、まとめてサンダルで踏みつけ火を消した。何をされたかよく理解出来なくて、唖然としている男子達を尻目に、彼らが散らかしたゴミを一まとめにし、真ん中のひときわ暗い目をした男の膝の上に載せ、

「捨てなさい」

と、するどく言った。やっと、自分たちのされたことを理解した男子達が「何だ、てめぇは!」 と、立ち上がり、亜弥を取り囲んだ。背の高い男が、血管の浮いた細い腕を伸ばし、亜弥の胸ぐらを掴もうとした。ほとんど同時に男が宙を飛んで背中をアスファルトに打ち付けた。

「このやろー 」

小太りが蹴りを入れ、もう一人が続いて殴りかかる。亜弥は小太りの蹴りを五指を張った右手首で、すくい上げるように受けながら流し込み、そのまま腕

の第一関節に挟み込む。バランスを失った小太りは、仰向けにひっくり返り、

アスファルトに頭を打ち付ける。続いて、亜弥は、もう一人の突きを内受けで

かわす。かわした手のひらに十分にバネをきかして男に目打ちを決める。突然の衝撃に、三人の男子はすっかり戦意を失くした。背の高い男が逃げるように立ち去ると、後の二人もそれを追いかけた。 昇は、突然のCMのワンカットのような場面に、動くことさえ忘れ、ぼんやりと亜弥を見ていた。

「昇、さあ、行こう」

亜弥の言葉にやっと自分を取り戻した昇は

「おい、無茶すんなよな」

と、やっとひとこと言えた。

「だって、私の頭には、『未成年はタバコを吸ってはいけない。ゴミはゴミ箱へ』って書いてあるんだもの」

と、笑いもせずに亜弥が言った。

どうにか気を取り直した昇は、亜弥が着られそうな服と、今夜と明日の分の食料品の買い物を済まし、「ナム・プリック」で、ようやく一息ついた。亜弥は、水の入ったコップを珍しそうに眺めてから、チョコレート色の瞳を昇に向けて尋ねた。

「ねえ、昇。私がしたことはダメなことなの」

「いや、間違った事じゃないよ。ただ、突然だったので驚いただけさ。亜弥のプログラマーはイマジネーションはまったく足りないけど、公徳心は強いようだね。でも、状況などまったく考えずに起動するようにセットされている。ホントに驚いたよ。

本当は大人の誰かが注意しないといけないんだ。でもね、やっぱり怖いし、正義感を出して殺された人だっている。みんな亜弥みたいにやりたいと思ってもなかなか出来ないのさ。でもね、今日のような事は、いつでもやってもいいわけ……」

昇は何だか自分に言い訳しているようで、途中で話を止めた。手を大きく挙げて、タイ人の女主人を呼び、いつものトムヤムクンとフランスパン、そしてビールを注文した。(第一章完、第二章につづく)

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2012年3月27日 (火)

冬も終わりです。 ノーマルタイヤに替えました

春が来たといううれしさと、スキーも終わったなというちょっとの淋しさを感じながら、MINIのタイヤをスタッドレスからノーマルに替えました。

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でも、これが結構大変なのです。もちろん、タイヤを替える作業はディーラーにお願いします。でも、タイヤを運ぶのは自分でしないといけません(当然ですが(^^;))。これが大変なのです。うちのベランダに置いていたノーマルタイヤ4本を車に運んで積み込む。これが重い!! 205/17なのでずっしりときます。そして、戻ってきたスタッドレスを、またまたうちのベランダに運び込みます。

十分に汗をかいて、やっと一息。

スタッドレスと違って、ノーマルタイヤはステアリングがずしっと重くなり、乗り心地がゴツゴツします。でも、また、すぐに慣れるんでしょうね。

今年も、このスタッドレス、1度も雪道を走ることはありませんでした。

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小説 アンドロイド 「AYA/2nd」 連載4

陶器が壊れる突然の大きな音に、昇は跳ね起きた。昔つき合っていたガールフレンドと微笑みながら話をしている淡い夢の途中だった。時計を見ると朝の六時。あわてて音のした部屋に向かう。

ダイニングキッチンは大変なことになっていた。フライパン、ポット、コーヒーミル、コーヒーカップ、食パン、ベーコン、たまご……。キッチンのあちこちに、意志を持った生き物達が急に動きを止めたように散乱していた。アイボリーのフローリングの上には逆さまになったフライパンの上に卵が落とされ、ハイマウンテンのコーヒー豆が散らばり、ガラストップのガステーブルにはトーストになるはずだった、月に一度のフォートナム&メイソンのロイヤルローフが乗っかっていた。そして、ガス台の前には首をかしげた亜弥が立っていた。

言葉を失い、あんぐりと大きな口を開けて立ちすくむ昇に気がつくと

「フライパンを出して、卵を出して、コーヒーを出す。食パンを用意してトーストにする。これが一般的な朝食である。と、頭に書いてあるのに何故パンも目玉焼きも焼けないの。ポットのお湯も沸かないし、何故コーヒーが粉にならないの?」

昇は、これは突然切り替わったいやな夢なんだと、必死に思い込もうとした。無駄だと知りながら……。

「いいかい。何でも、ただ出しただけでは料理にならないんだ。切ったり、火を使って焼いたり……つまり、色々な行為が有機的に結びついて料理が完成する。うーん、とにかく君は何もしなくていいから、僕のすることを観察していてくれ。君は優秀なロボットらしいから、そうやって学習出来るはずだとマニュアルに書いてある。学習が出来ていないのに、下手なプログラム通りにしようとするとこんなことになる。今日は日曜日だから良かったけど、普通の日だったら僕は完全に遅刻だ」 たっぷり30分かけて片付けたキッチンの椅子に座り、昇は亜弥に懇願した。亜弥は悪びれる様子もなく

「ふーん、そうなの。エネルギーを摂取するために有機的に結びついた行為の総体が朝食ってわけね」

昇は、大幅にイマジネーションの不足したプログラマーを呪った。とにかくこの子とこれ以上部屋の中にいると気が滅入りそうなので、買い物と、亜弥の学習がてらに散歩に行くことにした。

一年のうちで良い季節が二つあると昇は思う。春と、この時季だ。昇の住む小さなマンションを出ると、高い空に、芸術家かぶれのペンキ屋が白いペンキを幾筋も幾筋も伸ばしたような巻雲が見え、少し冷たくなった風が陽だまりを通り過ぎる。近所の白い家の小さな花壇にはガーベラやオシロイバナが暖かい日差しを浴びていた。辺りには、まだ微かに金木犀の残り香が漂い、昇を少し癒してくれる。二人は住宅街を抜け、駅の方に続くゆるやかな坂を下りた。亜弥は珍しそうに辺りを見ながら昇のすぐ後ろについて歩く。外に出てからズーと無言である。

国道が通る信号を渡ると駅前の商店街に出る。ブティックや本屋、飲食店などが入った複合ビルを中心に、コンビニや花屋、ケーキ屋、靴屋などが並ぶ小さなアーケードがある。ごく普通の商店街であるが、二つ、ちょっと珍しい店がある。それは、地下にライブハウスを持つ楽器店の四階建てのビルと、タイ人の経営する「ナム・プリック(野菜料理)」という名前のタイ料理の小さな店である。昇は、まだ一度もタイには行ったことがないが、ここのトムヤムクンが大好きで、ビールを飲みながら、このトムヤムクンを食べ、フランスパンを囓るのである。そんな話も亜弥にするのだが、興味があるのか無いのか、その表情からは読み取ることができない。たぶん、言葉からイメージを構成することがあまり得意ではないようだ。亜弥は、無表情に昇と並んで歩く。他人から見たら、この二人の関係はどう見えるのだろうなどと考え、手でもつないでみようと思うのだが、亜弥の反応が予想出来ず、動かしかけた右手を引っ込めた。

帰りにナム・プリックでお昼ご飯を食べて帰ろうなどと考えながらコンビニの前を通りかかる。制服は着ていないが、高校生風の男子が三人、店の入り口の横にべったりと座り、タバコを吸っていた。(つづく)

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2012年3月26日 (月)

小説 アンドロイド 「AYA/2nd」 連載3

さらに昇は思った。

「だいたい世の中なんて何が起こるかわからないものだし、情報番組のコメンテーターの言うようになんて世の中は動かないに決まっている。地震だって急に起こるし、50年以上続いている保守政権だっていつ交代するかわからないのだから、僕の家に突然アンドロイドが来たって別に不思議なことではないはずだ。でも、貴殿の生活に役に立つと言われても、僕は特に困っていることなんか何もない。すごくおいしいとは言えないにしても、料理だって出来るし、お寿司も握れる。アイロンがけだって上手に出来るし、掃除も決して嫌いじゃない。親しいガールフレンドもいるし、二週間に一回位はいっしょに寝る。十分に満足とは言えないかもしれないけど、今の生活を楽しんでいる」

とはいえ、唐突で、一方的な「依頼」も、昇の日常を大きく妨げるものでもないようだ。それに、多少の好奇心もあった。昇はもう一つの段ボールを開け、決してセンスがいいとは思えないが、きちんと下着を着けた下半身を取り出し、大きなプラモデルを組み立てるようにそれぞれの部品を組み立て始めた。主に腕や足の関節をつなげたらいいようである。しかし、プラモデルのように接着剤でくっつけるわけではない。たくさんのセンサーや、超小型モーター、血管のような無数の配線が色別の小さなユニット状になっている。それぞれの色を間違わないように丁寧に一つずつはめ込んでいく。昇は有能な外科医が細い血管を一つずつ縫合するように神経を指先に集中させた。不自然な姿勢で腰が痛み始めているが、かまわず作業を続けた。両腕、両足をつなぎ合わせると、昇はようやく床に腰を落とした。さほど暑くもないのに額や、首筋に汗が流れる。長袖のTシャツの背中は汗で張り付いている。額の汗を袖でぬぐい、改めてアンドロイドの全身を眺める。

Tシャツに下半身下着では何ともアンバランスなので、昇は、寝室にしている四畳半ほどの洋室に行き、洋服ダンスからジーンズを取り出した。ロボットの身長は百五十五センチ程度なので、昇のジーンズでは大部長いが、裾をまくれば何とかなりそうだ。いささか肉感的な下着姿の下半身に、少しドキドキしながら、昇はジーンズを穿かせた。上からざっと眺めてみる。髪は流行りのアシンメトリーボブ風で、少し丸顔。目を開けたらきっと愛らしい顔であるに違いない。小柄であるが、「フェイト」の少女セイバーのように足が長い。とりあえず、リビング替わりにしている八畳の洋室まで引きずってきて、先週届いたウールリネンでできた若草色のジャギーラグに寝かせた。それから、ダイニングキッチンに戻り、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干してつぶやいた。

「やれやれ」

セットアップ後に再起動させると、「ブーン」という小さなノイズの後に亜弥(AYAⅡでは人間の名前らしくないので、昇が勝手に命名した)の全身が細かく震えた。すると、AEDの電気ショックで生命を吹き返した人間のように、ジワっと亜弥の身体に生気がみなぎってきた。

亜弥は大きく目を開いた。ほんのり赤味がさした幼児のような柔らかい肌。少し丸味をおびた形の良い鼻にチョコレート色の瞳がよく似合っていた。

昇は「こんにちは」と、とりあえず挨拶をした。それ以外の気の利いた挨拶などとても浮かんではこなかった。亜弥は「こんにちは」と応えてから辺りを見渡した。それから昇の目を見つめて

「木村昇30才。金属加工メーカーのSEで独身。あなたのことはだいたい知っているわ」

と、つまらなそうに言う。昇は少し顔を歪め、ひと呼吸置いて話を続けた。

「君の名前は亜弥。僕がつけた名前だ。もし嫌だったら言って欲しい。今日から君とここで過ごすことになるらしいけど、君は特に何もする必要はない。そして、僕の邪魔もしないで欲しい。君は優秀なコミュニケーション型のロボットらしいので、僕の生活の様子を見て、人間の生活について学習してほしい。つまり、社会的な常識というやつだ。何かわからないことがあったらいつでも質問して構わないよ」

昇は、極力友好的に話をした。

「名前は別に嫌じゃないわ。センスが良いとは言えないけど、あなたが決めたのならそれでいい。私はあなたと協調するようにプログラミングされているから、基本的にあなたに逆らうことはないから安心して」

何だかいちいち癇に触る。昇は、このアンドロイドの感情をプログラミングした研究者の性格について少し考え、思い直してマニュアルをもう一度開いてみる。

注(3)AYAⅡの感情、性格等、心情領域は他者とのコミュニケーション活動や、環境によって進化あるいは後退することがある。

「君の、その少し生意気な性格も、設定の調整が必要なようだね」

亜弥は昇の言葉を無視して、絨毯の上で不自然なストレッチをし始めた。(つづく)

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2012年3月25日 (日)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」 連載2

ヤケクソとはこういうことを言うのだろうなどと、妙に冷静に分析しつつ、女の首を観察した。。さすがに触ってみる気にはならないが、死体ではないと直感した。目は閉じている。限りなく人間に近いが、3DのCGアニメのようにどこか人工的なのである。少しばかり勇気が出てきた昇は、保護材をすべて取り除いた。鋳型のようなホームドポリスチレンにピタッと収まった女の上半身が出てきた。腕だけが、一本ずつ薄い樹脂の保護材に包まれ、ワンセット並んで左横に添えられている。薄いブルーのTシャツを着ている。一呼吸置いて、そっと手を触れてみると、人間の皮膚の感触と良く似ているのだが、明らかに異質な感触があった。右側に、ビニールに入ったいくつかの機器とマニュアルのような冊子があった。昇は早速をそれを手に取り、そのまま床に座り込み、小さな字で書かれたマニュアルの文章に集中した。冊子の前書きには概ね次のようなことが書いてあった。

1、この機器はヒューマノイドロボット(Automatized.Yield.Android 2nd)愛称AYAⅡである。

1、現存するどのヒューマノイドロボットよりも高度な知能と機能を有している。つまり、人との自然な会話を行うコミュニケーション知能や、自律移動を実現する移動知能はもとより、感情を理解し、コントロールする知能も有する画期的なヒューマノイドロボットである。そして、その能力は未知数である。

1、試作機であるため、実際に使用し、モニターの必要がある。

そして、最後に次のような依頼文が添えてあった。

当研究所の独自の調査により貴殿がモニター報告者に選ばれた。この栄誉を誇りと思い、モニター活動に励んでもらいたい。しかし、このことによって貴殿が肉体的にも精神的にも何らかの損害を受けることは決してあり得ない。AYAⅡはヒューマノイドロボットであるため、定期的な充電以外の補給は一切必要ない。モニター報告も自動的に行われるため、特別に当研究所が指定した場合以外は、文書等での報告を求めることは一切無い。貴殿の平素の日常生活を妨げるものは何一つあり得ないばかりか、貴殿の生活に役に立つことも多々あるだろうことを確信している。今すぐ、マニュアルに従い、ヒューマノイドロボットのセットアップを実行し、モニタリングを開始していただきたい。 以上

「感情」というものを徹底して排除したマニュアルを読み終えると昇は小さなため息をついた。

「死体と比べれば、アンドロイドなんてこわくないよね。それにこの子はちょっと可愛いしね。」

さらに昇は思った。

「だいたい世の中なんて何が起こるかわからないものだし、情報番組のコメンテーターの言うようになんて世の中は動かないに決まっている。地震だって急に起こるし、五〇年以上続いている保守政権だっていつ交代するかわからないのだから、僕の家に突然アンドロイドが来たって別に不思議なことではないはずだ。でも、貴殿の生活に役に立つと言われても、僕は特に困っていることなんか何もない。すごくおいしいとは言えないにしても、料理だって出来るし、お寿司も握れる。アイロンがけだって上手に出来るし、掃除も決して嫌いじゃない。親しいガールフレンドもいるし、十分に満足とは言えないかもしれないけど、今の生活を楽しんでいる」

(つづく)

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あっ、春なんだー!!

今日も寒かったのですが、久しぶりにお天気が良かったので、ぶらぶらと近くのに公園へ。

公園の周りをウォーキングしていると発見しました!!

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少しわかりにくいかもしれませんが、ハクモクレン(白木蓮)です。

まだつぼみでしたが、いつの間にか大きく膨らんでいました。

寒いと言ってもやっぱり春なんだなー!!ってつくづくと思いました。これが花開く頃にはすっかり暖かくなっていると思います。

何だかうれしくなってきました。

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2012年3月24日 (土)

アンドロイド 「AYA/2nd」 小説です

今回から、少し、しばらく? 小説を連載します。

windows Live writerで書いていますので、コメント要不要の設定が出来ません。

もし、時間がありましたら読むだけ読んでみてください。決して変な小説ではありません(^^;)。たぶん。

 

AYA/2nd

2008年10月。とても穏やかな土曜日の午後だった。

ダイニングキッチンの白いテーブルに、沸かし立てのコーヒーを置き、大好きな文庫本を手にした時に、宅配便の荷物が届いた。

幅、奥行き共40センチ、高さ1メートルほどの大きな段ボールが二つ。重さも、段ボール一つで10キロ以上ありそうだ。

「ここに印鑑かサインお願いします」

昇よりも2、3才若そうな宅配業者の若者が額に汗を浮かべ、息を切らした声で言いながら受け取りを差し出す。昇は心当たりのない荷物をいぶかりながらも、受け取りにサインした。

宛先は確かに昇で、差出人は「大日本人間工学研究所」 という、昇の記憶のどこを探しても出てきそうもない名前である。先月30歳を迎えた誕生日のプレゼントかなという思いも一瞬頭をよぎったが、瞬く間に打ち消した。多少の不安はありながらも、何事にもあまりこだわることのない昇は、とりあえず段ボールを開けてみることにした。

ガムテープを剥がすと、結構しっかりした発泡スチロールが本体を保護している。昇は少しためらった。まったく想像も付かない恐ろしい何かが現れるような、嫌な恐怖を感じた。しかし、ここで段ボールを閉じてしまっても、段ボールが消えてしまうわけでもない。時間を元に戻すことは出来ないと思い直して、発泡スチロールの保護材を取り外す。

「ウッ!」

昇は反射的に手を引っ込め尻餅をついた。細かい震えと嫌な汗が昇の指先から全身に広がり、押し殺したような長い悲鳴が喉から自然に出てきた。昇はそのまま意識を失いかけた。このまま意識を失ってしまって、気がついたときには何もない、元通りの、いつもの2DKの玄関であってくれたらと思った。しかし、昇は意識を失わなかったし、大きな二つの段ボールも依然としてそのままそこに存在していた。そして、段ボールには女の首も入っているはずである 身体の震えがようやく収まると、昇は、この理不尽な現実に向き合おうと決心した。何度も頷きながら、昇は、少しずつ、少しずつ再び段ボールに近づき、保護材が取り除かれたむき出しの女の首に近づいた。(つづく)

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2012年3月23日 (金)

久しぶりの、東北新幹線Yamabiko 運が良いのか、悪いのか!?

用事があって、仙台方面に来ていました。

帰りに、S市から仙台空港に向かう時でした。

在来線に乗ろうと思い、駅に着いたら、な、なんと「強風のため列車運休」とのこと。

予定していた列車と次の列車が運休でした。その次の電車では飛行機に間に合いません!!

「そうだ!!新幹線だ!!」

と、思い立ち駅員に尋ねると「新幹線は通常運転しています」とのこと。

早速タクシーで5、6分の新幹線駅に。タイミング良く5分後に新幹線が到着するとのこと。

ひと駅だけでしたが、本当に久しぶりの新幹線でした。E2系かな?詳しいことはわからないのですが、すっきりしてきれいな列車でした。

ちょっと本を読んでいたらすぐに着いてしまいました(14分)もう少し乗っていたかったなー

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そこから空港アクセス線に乗り換え。

お陰で、余裕で仙台空港に着くことが出来ました。余裕があり過ぎて、こういう物まで買いました。

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ステッカーとフェィスタオルでした。

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2012年3月20日 (火)

ええー!! こんな広い所が? 知らなかったー

今年は寒い日が続きます。梅を結構長いこと見ることが出来ます。

梅が、何処かできれいに咲いている、なんてことを考えると何となくそわそわとしてきます。

そんな訳で、また梅を見に行きました。たまたまテレビ東京の番組で、「京都の嵐電で名所巡り」というのを見ました。

北野天満宮という神社の梅園がきれいだということです。

北野天満宮は、以前にバスでよく前を通っていた神社なのですが、1度も参拝したことがありませんでした。

本殿に至るまでの境内は随分広くて、寄贈されたお供え?の牛がたくさん居られました。

「お菓子と梅茶付き650円」の入園料を払って梅園に入りました。

これが広い!!

見渡す限り梅、梅、梅。

赤、白、ピンク

大阪城の梅園もきれいでしたが、ここは古い神社だけあって、なかなか趣のある梅園でした。

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神社の近くに、こんな古い酒屋さんもあったりして

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なかなか良い処でした。近くの方は是非1度。

すぐ近くの北野白梅町のお寿司屋さんのランチも(ミニ鉄火丼とうどんセット)リーズナブルで美味しかったです。

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2012年3月11日 (日)

心から……

今日で1年になりました。

様々な思いを込めて、

亡くなられた方々に心からご冥福をお祈り致します。そして、被災された方々が1日も早く元の生活に戻れますように

心から願っています。

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2012年3月10日 (土)

スキーも、もう終わりかな?グスン……。

だんだん暖かくなってきたので、焦ってスキーに行ってきました。

いつものゲレンデに着くと、雪がすっかり様変わりしていました。

あのサラサラの雪はどこかへ行ってしまいました(-_-)

そうなんです。シャーベットの雪でした。

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重い!!重い!!

引っかかる!!

でも、雪がたくさんあっただけでもありがたいです。ゲレンデ以外の場所には、所々土が見えていたにしても。

 

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来週は、寒の戻りとかで。

もしかしたら、あと1回位滑れるかもしれません。

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2012年3月 9日 (金)

梅見頃。やっと咲いた大阪城

大阪城に梅が咲きました。

今年は秋、冬の気温が低かったために、花の基になる「原基」という物質の成長が遅れたせいで開花が遅れたそうです。

そんなわけで、桜も遅いようですね。

この梅園に入ったとたんに「ふわー!!」と、梅の香りに包まれました。

紅梅、白梅はもちろん、ピンクや薄緑など、とてもたくさんの梅があります。

大阪の中心で梅を見るのもなかなか良いものです。平日だったので、それほど人は多くなかったのですが、土日はすごい人なんでしょうね。

大都会の中のオアシスのようなものですね。

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2012年3月 5日 (月)

高く売れたぞ!!

僕の部屋の「徹底整理」を実行中で、要らない物を処分しています。

今回もかなりの本を処分しました。

その中から、比較的きれいな本、20冊位を厳選し、ブックオフに持ち込みました。

待つこと20分。今回は640円!!

結構高値に満足しました。

そのお金で、石田衣良と伊坂幸太郎の本を105円ずつで2冊買って帰りました。

まったく読んでいない、うちの奥さんの古い「日本文学全集」があるのですが、これは売れないだろうなー(>_<)

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2012年3月 4日 (日)

灯りを点けましょ ぼんぼりに……

今年もやって来ました、ひな祭り。

今年は例年になく早くに飾りました(2月の中頃でした)

ぼんぼりに浮かび上がったお内裏様とお雛様です。

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正式には男雛と女雛と呼ぶのだそうです。サトウハチロー作詞の「うれしいひなまつり」の歌以来、お内裏様とお雛様と呼ぶようになったのだそうです。さらに、「♪赤いお顔の右大臣」というフレーズがあるのですが、これも間違いで、正しくは「左大臣」なのだそうです。

これらの間違いを指摘されたサトウハチロウは、以後、この歌を一切聞かなかったそうです。出来れば、この世から抹殺したかったようです。

どこかもの悲しい旋律のこの歌は、僕は良い歌だと思うし、この程度の間違いはまったく問題ないと思います(笑)

そして……ひな祭りには桃の花ですよね

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今日はうれしいひな祭り!!

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