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2012年4月 4日 (水)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」第二章 連載9

拳銃で照明器具を壊してガラスを散乱させ、靴を脱がせて動けないようにするというのは映画やマンガなどでは常套手段ではある。などと、恐怖で一杯の頭の中のどこか覚めた部分で昇は思った。

「おい、お前、こっちへ来い」

男が突然亜弥の腕を掴んで引っ張る。

「こいつらが変なことをしないようにおまえは人質だ」

男は亜弥に拳銃を突きつけながら、亜弥を前にしてカウンターをくぐり、店員が伏せている左手のレジの近くに来た。男は気づいていないかもしれないが、拳銃を突きつけられた亜弥に恐怖の表情はまったく見られなかった。

「おい、立ってレジを開けろ。札だけこのバッグに入れろ。変なことをしたらこの女を撃つ」

フルフェイスの中からくぐもった声が聞こえる。じっと様子を窺っていた昇は、店員が素直にお金を渡すことを祈った。

店員はこわごわ立ち上がり、震える手でレジを開けた。カウンターの上のおでんが何事もないように暖かな湯気を立て、美味しそうな臭いをレジ周辺に漂わせていた。男と拳銃がなかったら穏やかないつもの深夜のコンビニであったはずである。

ちらっとレジを覗いた男が

「おい、これしかないのか。もっとあるはずだろう」

「午後に店長が来て、売り上げを、レジから奥の金庫に入れて帰るので、今はそんなにないのです」

店員はよく噛み合わない口でかろうじて答え、男の舌打ちを聞き流し、千円札が中心の札束をデイバックの中に入れた。手が震えてバッグの中にうまく入らない。男はイライラしながらそれを見る。ちょうどその時

「ウワーーー」

スウェットの男が叫びながら入り口に向かって駆けだした。男は銃口をスウェットの走る足元に向け発砲した。弾丸が、スウェットの男の踏み出した床に、キュッと音を出してはね返り入り口のガラスにミシっと突き刺さる。一瞬ガラスに無数の亀裂が走る。

「ヒッ!」

奇妙な声を出して、男が転ぶ。散乱したガラスの上に手をついて、痛みに絶叫した。同時に入り口の自動扉がゆっくりと開いた。亜弥は、その隙を見逃さなかった。亜弥に突きつけていた拳銃が完全に横を向く。亜弥は男の右手首をひねり、拳銃を落とすと、そのまま手首の急所を押さえたまま、腕を逆に捻りながら裏固め入った。俯せのまま、右手を捻られたまま上に突き上げられ、手首は逆九十度に固められている。少しでも力を加えられると激痛が走るのか、男はうなったまま少しも身動き出来なくなった。

「昇、拳銃を取って、速く」

亜弥がするどく叫ぶ。茫然と見ていた昇は、その言葉にすばやく反応した。カウンターに潜り込み、千円札に混じった拳銃を取る。わずかに硝煙の臭いのするその拳銃はずっしりと重かった。昔映画で見たS&Wの回転式自動拳銃のように思えた。少し震える手でズボンのポケットに突っ込む。フラフラッと立ち上がった店員に警察に電話するように指示をする。

「亜弥、そのまま待ってろよ」

と言いながら、昇はカウンターを越えて、散乱したガラスに注意しながら売り場の日用雑貨コーナーに向かった。そこにあった荷造り用の細いロープとハサミを手に取ると

「みんな手伝ってください」

と、そこに居た二人に声を掛けた。二人は我に返ったように立ち上がり、それでもまだおそるおそる、靴下のまま、昇の後に付いてきた。亜弥は中腰で、まっすぐに伸びた男の右手首を逆固めしながら押さえつけていた。昇はサラリーマン風の男を指さし

「いいですか、あなたはこの男の背中に馬乗りになって頭を押さえてください。それからあなたは反対向きに足に乗って動けないようにしておいてください」

と、今度は学生風に指示した。二人は少しためらいながらも昇の言う通りにした。店員は護身用の警棒を持ってきて構えていた。亜弥が男の手を離した。昇がロープを取り、男の手を縛ろうと移動した時に、不自然に伸びたサラリーマン風の足に引っかかった。サラリーマン氏が体制を崩し、後ろに反り返った。背中から体当たりをくった学生はそのまま前のめりになり床に倒れこむ。二人ともバランスを崩して力がゆるむ。男は、そのわずかな隙を逃さなかった。

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コメント

初めまして、くるたんパパさんのところ
経由で来ました。(*^ ^* )V

コメ欄開けて下さったんですね。
ありがとうございます。

続き、楽しみにしていました。
こういう展開になるだろうなとは思って
いたけど、一難去ってまた一難、すんなり
ケリがついたら面白くないものね。さて、
犯人は逃げることができるのかな?(^~^*)

投稿: casa blanca | 2012年4月 4日 (水) 18時32分


casablancaさん、初めまして。と言っても、くるたんパパさんのブログでいつも拝見しています。よろしくお願いします。
「AYA/2nd」読んでいただきありがとうございます。
内容的にも良い話になるように頑張りたいと思っています。よろしくご支援お願い致します
<(_ _)>。

投稿: モーツアルト | 2012年4月 4日 (水) 22時53分

手に汗握る場面ですねぇ

さてさてこの先、どうなるのでしょうか。

AYAはスーパーマンのような大活躍をすると思いきや…。

うーん
続きがますます楽しみです。


casa blancaさん
コメントありがとうございます。
くるたん家族共々
よろしくお願いします。

投稿: くるたんパパ | 2012年4月 5日 (木) 05時36分

くるたんパパさん
ご期待に添えられるかどうか自信は無いのですが、がんばります。
皆さんの感想を参考にして、話を進めて行きたいと思っています。

いろいろとサポートしていただき感謝しています。ありがとうございます。


投稿: モーツアルト | 2012年4月 5日 (木) 10時52分

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