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2012年5月

2012年5月31日 (木)

優れもの…… わぁーこれで悩み解消や!!

テレビショッピング的なノリですみません。

このキッチン用品なんです。

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京都のロフトで見つけました。

僕はゆで卵が結構好きで(板東英二ほどではありませんが(^^;))よく作るのですが、作り方が悪いのか、どの玉子でも、皮がむきにくいのです。

いつもイライラしながらむいています。そして、いつもボロボロになってしまいます。

つるっと、きれいにむけたことがなかなかないのです。

それが、この道具を使ったら、嘘みたいにつるっとむけるのです。

方法は簡単で、茹でる前の生卵の状態で、この道具に乗せてぎゅっと押しつけ、小さな穴を開けるのです。

もちろん中味が出てきたりはしません(^^;)。

後は普通に茹でるだけで、きれいにつるっとむけますよ。

僕のように、ぼろぼろのゆで卵に悩んでいる方には朗報です(^^)。値段は300円台でした。

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2012年5月30日 (水)

小説 「3・3㎡/2」連載2

「傷は治りましたか」

三日後の水曜日にやってきた男がそう訊ねた。グレーのビブエプロンの花南が、座って花の手入れをしていた時である。花南が振り向くと、斜めからの西日を顔半分に受けた男が微笑んでいた。

「この前はどうも。立川、立川祥吾と言います。先週こっちに引っ越してきました」

「あっ、はい。私は結城と言います。先日はどうも……」

予想もしなかった男の自己紹介に、花南も思わず名前を言った。同時に、固有名詞がついたこの男がただの客から一つこちら側に超えてきたように感じた。仕事の帰りらしい祥吾は、グレーのスーツ姿であった。白いボタンダウンのシャツに、グレーと黒のストライブのネクタイが似合っていた。少し緩めに結んだネクタイが、花南には好ましく思えた。

「来週、娘の七回目の誕生日なのです。誕生日に花屋さんから花が届くというのが、娘の憧れらしく、僕が買っていってもダメなようです。このお店では、そういう配達はしてもらえるのでしょうか」

黒いカバンを左手に持ち、右手で後頭部をさすりながら祥吾が訊ねた。横のコスモスが風でかすかに震えた。

「大丈夫ですよ。お時間を言っていただければその時間にお届けします」

花南は立ち上がりながらそう言って、固有名詞になった祥吾を少し意識して付け加えた。

「お誕生日ですか。おめでとうございます。お嬢さんのお誕生日にお花を贈るなんてステキですね。ご家族の様子が目に浮かぶようです」

花南の足元の紫のリンドウが風に揺れ、首をかしげた。

口許を少しだけ歪めた後、祥吾は微笑んだ。

「娘と二人で暮らしています。近くに両親が住んでいるのでこちらに越してきました。隣の町に住んでいたのですが、こちらに良い処が見つかったのです。両親には面倒をかけるのですが、娘はとても喜んでいます」

「私は、アネモネかな」

「エっ……」

「アネモネの花言葉に『一人ぼっち』と言うのもあるんだそうです。母と二人暮らしなのですが、今、入院しているんです。」

「アネモネか……。ギリシャ神話に出てくる、美少年アドニスが流した血でこの花が生まれたという伝説があるんですよね。二人の美女から愛された美少年。でも、結局は一人ぼっちで死んでいく。おやおや縁起でもないですね。すみません」

「美少年アドニスか……。何だか悲しいお話ですね。立川さんお詳しいんですね」

「いえ、いえ。娘に、花にまつわる伝説のようなものを聞かれたときに、いくつか調べたうちの一つです。でも、こういうことが分かると、何気なく見ていた花も、かなり近くなりますね。楽しいです」

そう言って、頭に手をやる。

「はい。名前を知っているだけでも、かなり近くなりますが、花言葉や伝説などが分かるともっと楽しいですよね。男の人がそういうことを知っているって、ちょっとかっこいいですよ」

「学術的なことは何にも知らないのにね」

祥吾はそう言うと、お願いしますと、ぺこりとおじぎをして店を出て行った。少し冷たくなった秋の夕風が、火照った花南のほおをスーと通り過ぎて行った。(つづく)

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2012年5月28日 (月)

小説 「3・3㎡/2」 連載1

(※アンドロイド「AYA/2nd」を少しお休みして、新しい連載を、少々。)

あれからどの位時間がたったのだろう。この狭い空間には、時刻を示すものも、時刻を暗示できる窓もない。入り口にはドアがあるが、随分前から開くことはない。鍵は、部屋の内側にしかついていないのだが、そんなことはこの状況を解決するのに何の意味も持たない。このドアは、外からなら開くかもしれないが、開けるべき人間は誰もいない。

「寒い」

冬にはまだ間があるのに、深夜になってからひどく寒い。何時間か前の心からの温もりが、まるで遠い記憶のように疎遠な出来事に感じられる。ここには、暖房装置は一切ない。最近は付けている人も多いのかもしれないが、花南(かな)は、不幸にも、その必要を感じていなかった。パジャマに素足というスタイルもその原因のひとつなのであろうが、この時間帯、たいがいの人は同じような格好だと思う。一.七㎡ほどの広さのこの部屋には電球型の蛍光灯が一つと、無機質な灰色の壁紙と、床にはベージュの塩ビが貼ってある。当然のことながらテレビもオーディオ装置もない。仮に、それらがあれば、あるいは幾分気が紛れたのかも知れないが、それも根本的な解決にはなりはしないだろう。

いったい何時なのだろう。たとえ時刻がわかったとしても、状況は変わらないのだが、時刻がわからないことが、一層花南の不安をかき立てる。時間を失った花南には、もう未来は存在しないも同じように思われる。いや、これはメタファーではなく、現実であるかもしれない。そんな状況にもかかわらず、花南は立川祥吾(しょうご)のことを考えた。

花南は五年前に父を癌で亡くした。それ以来母と二人暮らしである。父が残してくれた幾ばくかの預金と、父が、こつこつと買い貯めていた株券が思わぬ値上がりをし、すべて売却したらある程度の金額になった。父が残した一軒家を売って、駅の近くのマンションに越してきた。十一階建ての八階。遠くに見える山並みと、そこから無数に広がる建物。高速道路の高架。ジオラマのようなこの光景を花南は結構気に入っている。母は、この夏に脳卒中で倒れ、以来駅の近くの公立病院に入院している。近いので毎日病院に行ける。贅沢は出来ないが、母と二人で食べていくのに十分なものを父が残してくれているので、暮らしのために花南が働く必要はないのだが、花南は、友人が経営している花屋で働くことが楽しくもあり仕事を続けている。母が入院している病院も近いので、何かと便利でもある。花南は、今年四十二才になった。今まで何人かの男とも付き合ったし、その内の一人と長い期間つきあった。しかし、何となく結婚までは踏み切れなかった。河南は真にそれを望んでいなかったのだと思う。そして、今に至っている。今の自分が決して若いとは思わないが、三十代の頃とさほど体型も変わっていないし、目元の優しい印象や、形の良い鼻は自分で結構気に入っている。肩まで伸びた髪も自分にはよく似合っていると思う。つまり、四十二才という年令も、河南のそれなりの美しさを損なう要因にはまだ至っていないようである。

祥吾が花南の店にやって来たのは秋の終わりの頃だった。

「この時期に、部屋にあれば良い花ってありますか」

アイアンブルーのセーターに白いボタンダウンのシャツを着たこの男は、四十半ば位であろうか、ちょっとくたびれた感じもするが、初秋の秋風のような柔らかさがある。髪は白髪が交じっているが、少し前に垂らした髪と、目もとの印象など、花南の好きなキキョウが、終わりかけているようでもあるが、嫌いではない。

「これはどうですか?」

秋明菊に二、三の花を添えて胸元で揃える。

「あっ、良いですね。うちの部屋も明るくなりそうだ。それ下さい」

花南が切り花を包もうと、レジのテーブルに載せたときに、側にあったガラスの花瓶に触れ、大きな音をたてて割れた。床に散った薄いガラスが、照明の光を受けて小さな花びらのように輝く。

「痛い」

割れたガラスに手を触れて、花南が小さな悲鳴をあげた。右手の人差し指に赤い糸のような血が滲む。

「良かったらこれをどうぞ」

男が差し出したカットバンを、いぶかしげに見ながらも、花南は礼を言って受け取った。

「うちの子がよく小さなケガをするものですから、いつも財布にいれているんですよ」

少し照れながら、男は、財布をチノパンの後ろのポケットに入れた。

僅かな花束を持って帰って行く男の後ろ姿を、花南はしばらく見ていた。

「ふぅーん……」

右手にスーパーの買い物袋、左手に花を持った男の背中は、ちょっともの悲しくもあり、同時に、親しみも感じた。男の姿が交差点を右に曲がり見えなくなると、花南は残りの秋明花を揃えながら、男の部屋に生けられたこの花の有りようを想像した。

「部屋にあれば良い花か……」

右手のカットバンに触れながら、花南は呟いた。(つづく)

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2012年5月27日 (日)

ゆりの木の花が咲いたよ!!

近くの植物園に行ったら、ゆりの木に花が咲いていました。

ゆりの木に花が咲くということも、あまり思いもかけていなかったし、想像すらしていませんでした。

桜とか、梅とかは誰でも知っているのですが、ゆりの木の花って、かなりの人は知らないのではないかな?

いや、もしかしたら「あほやなー!!ゆりの木の花って、有名やないか!!そなんことも知らんのかー」とか、言われるのかもしれません。

この植物園の広大な「ゆりの木広場」に突如として花が咲いている光景は、とても感動しました。

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すぐ近くにメタセコイアの巨木もあったりして、なかなかですよ。

蓮の花もきれいに咲いていました。この時期、植物がとても生き生きしています。僕もマイナスイオンをいっぱい吸って、生き生きしています(きっと)。

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2012年5月25日 (金)

カロリー消費量についての私的考察

ジムのウォーキングマシンで歩きながら考えました。

このマシーンは、消費カロリーが数値と食べ物で出てきます。

初めは、あめ玉でした。飴ちゃんは、一個分消費するのに時速5.8㎞位で800メートル歩きます。次は、バナナが出てきました。バナナ1本分を消費するのにはもっと歩かなければなりません。次はししゃもの塩焼きが3匹出てきます。

その次はカフェオレでした。

カフェオレを何とか飲み干したら、今度はマグロの握りが三貫。もうすでに20分近く歩いています。次にショートケーキが出てきました。

もうお腹いっぱいなので、ショートケーキ止めようかなとも思ったのですが、せっかくなので予定の時間を少しオーバーしても食べてしまおうと思い、がんばって歩きました。

35分でこれらを消化しました。

とどめのショートケーキは275キロカロリーでした。何と時速6㎞近くで早足で35分歩いても300キロカロリー弱しか消費できないのです。

食べるのは楽ですが、消化するのはどれほど大変なのかを、今更ながら実感しました。

僕は、飴ちゃんを食べることはないのですが、大阪では、おばちゃん達の必需品です。飴ちゃん1個分消費しようと思ったら、早足で800メートルも歩かないといけないことがわかったら、絶対食べないと思います。でも、彼女達は歩くと同じくらいにおしゃべりして、エネルギーを消費しているのかもしれません。

食べるのはほどほどに、しっかり運動して体力をつけるのが1番良いのだと改めて思いました。やれやれ、大変だ!!

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2012年5月22日 (火)

小説 encroach  ~浸食する~

(注)アンドロイド「AYA/2nd」を少し休憩して、ショート、ショートを一つ。これはあくまでも小説であって、事実には基づいていません。

「エンクローチ」

私にとって彼はいったい何なんだろう。そして、彼にとって私はいったい何なんだろう。そんなことを考えることが時々ある。確かに若い頃のような感情を彼に抱くことはない。しかし

だからといって嫌いだとか、ある種の嫌悪感を持っているわけではない。彼はたぶん良い夫なのであろうし、私よりは幾分能力と呼ばれるものがありそうに思う。例えば彼は、ギターが弾ける。ピアノも弾ける。(私が教えてもらおうとすると露骨に嫌な顔をする)パソコンも結構得意だ。読んだことはないが、小説も書いている。それに、本来の用事もないのに、トイレで一時間近く読書をする。もちろん、それらが能力と呼べるとしたらであるが……。

彼はほとんど私に興味を持たないようだ。きっと私以上に。

夏休みに、一週間の台湾旅行を彼に伝えると

「ふーん、良いね。気をつけて行ってきて」と、それだけだった。私は、ちょっとだけ遠慮もあったのだが、そんな気遣いはまったく必要ではなかったようだ。私だったら、きっと

「ええー、一週間も! 誰と行くの」

位は聞いたかも知れない。たぶん。

私が干渉しないのを良いことに、彼は我が家の自分のテリトリーを確実に増殖させている。かつて共通の寝室だった和室は、彼の物が少しずつ増えているし、そこに置いていた私の洋服ダンスの三分の一位を無理やり空けて、彼のシャツボックスをつり下げてしまった。迂闊にも私はそれに半年近くも気がつかなかった。独立した娘の部屋も、すぐには気付かないほどに、少しずつ改装した。いつの間にか、ベッドカバーもカーテンもすべて交換した。要らない物も少しずつ処分してスペースを作り、小型の木工機械や様々な道具類が置かれていた。これにも四ヶ月気がつかなかった。私にも相談して欲しいと彼に言うと

「誰も使っていないからいいんじゃないの」 などと私の抗議を意に介さない。まあ、家に居る時間は彼の方が長いので、なかなかコントロール出来ない。

彼は、最近は自分の部屋にはあまり居ないようだ。私から見れば、バカでかいだけの電子ピアノや、訳の分からない機械や本で溢れている部屋に彼自身もうんざりしているのではないかと思う。この前、探し物をして彼の部屋に入った。机の下で、彼が地球上で二番目に嫌いなゴキブリの死骸を発見した。私は、その死骸を割り箸でつまんで彼のイスの上に載せておいた。その後のことは私は知らない。

先日、彼の寝ている和室にムカデが三回も出現した。この地球上で彼のもっとも嫌いな虫だ。しかも、夜中寝ている時にである。私はちょっとうれしかった。

四回目の夜中。彼が悲鳴をあげて私の部屋に飛んできた。今度は彼のパジャマの中に入ってきたそうである。お腹に刺された痕があった。その時は、さすがに私も彼に同情した。 しかし、それ以来、今度は、リビングが彼の寝室になった。リビングは彼の物が少しずつ増え、ここも彼のテリトリーの一部と化してしまった。しかし、彼のエンクローチもそこまでだ。私の部屋をそうしないのと同じように、私の心の中にもきっとエンクローチしないのであろう。

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2012年5月21日 (月)

京都のBlues man 豊田勇造

久しぶりにライブに行ってきました。

京都のBlues man 豊田勇造のライブです。

メジャーな人ではないのですが、知る人ぞ知る日本でも有数のBlues manだと思います。

今回もブルースハープとギター一本で、語りかけてくれました。

僕が大好きな「行方知らず」という曲は、残念ながら歌わなかったのですが、とても満足した夜でした。

それで、ユーチューブから拾ってみました。彼が若いときに作った歌です。これはブルースというよりも、ディラン風かな?

行方不知(豊田勇造) - YouTube

「関電や政府が、この夏15%節電って言ってるけど、電気がなかったら、俺はロウソクでライブやるし、みんながグッと近づいて来たらギターだってちゃんと聞こえる。PAも無くても大丈夫やん。それよりも、原発事故の方がどんだけ怖いか、みんなよー知ってるはずや」

と言って、彼がステージから離れ、客席に近づいて歌ってくれて

「ねっ、大丈夫やろ!!」

と、にこっと笑ったのが印象的でした。

電力が不足しないのが一番良いと思うのですが、この機会に今まで以上に、無駄な電気は使わないように心がけないといけませんよね。

カンデンやセーフの脅しに負けて、大○原発再稼働なんて、ダメですよね(^^;)

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2012年5月20日 (日)

癒やし系の曲だと思います

しばらく曲作りをしていないので、アーカイブですみません。

自作の曲で「風、八月の空に…」という曲です。広島の平和公園に行ったときに作りました。八月にしてはからっとした気持ちの良い日で、平和公園の木陰がとても気持ちの良い一日でした。少しもの悲しい感じの曲ですが 、この曲をリラクゼーションのエクササイズのBGMにしたら、とても気持ちよかったという人もいます。良かったら一度BGMに使ってみてください。ストリングスの音は心地よく吹く風を表現しています。とても単調な曲なので、眠くなってしまうと思います。エレピがここに眠る多くの魂を癒してくれるといいなーと思って作りました。

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2012年5月17日 (木)

音楽室!?

苦節8ヶ月。

あまり使っていない部屋を少しずつ片付けて、音楽室にしました。

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本箱を整理したり、ベッドを分解して、大型ゴミに出したり、ミシンでカーテンを直したり。休日に少しずつ片付けて、多少部屋にゆとりが出来たので、分散していた楽器を持ち込みました。ここに写っていない物もケースの中で眠っています(^^;)。

ピアノも、ギターも、技術的にはもう一つも、二つもなのですが、自分で楽しむ分にはいいか!!などと開き直っています。少し前までは下手なりに、アメ村のライブハウスで素人だけのコンサートに出たりもしたのですが、今はもっぱらこの音楽室です。

防音の設備がないので、限られた時間しか使えませんが、ここに入ると何となく楽しくなります。

完全な自己満足ですが……。

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2012年5月16日 (水)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」第5章 連載19

第5章 失踪

(1)

昇はひどく疲れていた。

二月初旬の冷たい雨に一時間近く晒された。そこらに居るはずはないと思いながらも、探さずにはいられなかった。傘はさしているが、この冷たくてひどい雨は、傘を容易に用無しにしてしまい、昇をひどく打ちのめした。小型車にしてはずっしりと重いミニクーパーのドアを開けた。身体のすべての重さをシートに預け、しばらくじっとしていた。やがて重たそうに右手を伸ばし、イグニッションの丸いボタンを押した。アイドリングが続いた後、エアコンの吹き出しから暖気が出てくる。それは、すっかり冷たくなった昇の身体の隅々まで行き渡り、細かい細胞を甦らせてくれた。昇は、身体を起こして、シフトレバーをDまで下げる。ワイパーのレバーを上げ、少し雨脚の弱くなった駐車場を静かに出た。

昇は、わずかに残された手がかりを頼りに深夜の高速道路を走った。雨はすっかり上がっていた。

「亜弥が突然消えるなんてあり得ない」

堂々巡りのフレーズが、熱を帯びた頭の中で幾度となく繰り返される。ダッシュボードの中央には、実用的な機能の必要性を遙かに超えた大型のスピードメーターがある。オレンジ色の針はほぼ12時の位置、140km/hからまったく動かない。前方には一台の車も見えず、片側二車線のセンターラインとサイドラインが、遙か遠くで限りなく一点に近づいて行く。昇は、車の操作は身体にまかせ、頭の中で様々な仮説を立てては打ち消していった。

亜弥が自分の意志で失踪するはずはない。大日本人間工学研究所が昇に何の連絡もなく回収することも考えられない。真崎という男からかかってきた電話が気になる。もっと詳しく聞いておくべきだった。口の中に酸っぱい感触が走る。後は、滋賀にあるR大学に行ってみるしかないはずだ。

突然、ルームミラーの一点が眩しく光り、それが中央に大きく広がり、やがて、右側のドアミラーに光が移動した。昇がほんの僅か右側に視線を移すと、メルセデスS350の大きな車体が、ほとんど音もなく追い越していった。そして、横長のテールランプがたちまち小さな点になり、やがて闇に消えた。ミニのスピードメーターは依然とし12時の位置にあった。あのメルセデスは優に二百は超えていると、昇は思う。スピードメーターの中に位置するフューエルメーターを見ると、小さな円周上に十等分して配置された四角のランプは、残り一個しか点灯していなかった。

「さっきのSAで入れれば良かった」

昇は舌打ちしながら思った。CDの挿入口しか露出していない銀色のカーオーディオから、この状況にまったく不似合いなCurly Giraffeが静かに流れている。やがて昇は、ガソリンスタンドのアイコンが描かれたSAの標識を確認すると、小さなため息をはき出し、ゆっくりとミニを減速させた。デジタル時計は一時を表示していた。(つづく)

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2012年5月15日 (火)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」第4章 連載18

12/25 20:10 時間でーす

昇が男に飛びかかろうとしたちょうどその時、男の右手から人影が飛び出した。男の右手に両手で掴みかかり、ねじり上げた。ナイフが落ちる。少し遠巻きに取り囲むたくさんの人々からは何の音も無い。落ちたナイフが「カラン」と大きな音を立て、二回転がってピクンと止まる。血と脂の付いた刃先が照明を受けて鈍く光り、ひどく場違いな光景を演出する。男は顔を歪めて、男にとって極めて正当な行為を阻止した人物に目をやった。そして、驚いたように顔を歪めた。亜弥だった。その瞬間、亜弥は捻った男の腕を少し上げ、腹部を開放し、角度をつけて、鋭く、力を込めて、みぞおちに膝蹴りを入れた。男はうめき声と共に、直前に食べた、未消化のスナック菓子を少し吐き、その上に自分の顔を乗せるように崩れた。駆けつけてきた警備員が二人、一人は男の腕をねじ上げて馬乗りに。もう一人はロープですばやく両足を縛った。昇が出来事に気づいてからわずか三、四分のことである。

美優は大きく目を開いたまま、声も出さず男を見つめていた。膝が小刻みに震えている。昇が近づくと、初めて自分の音声機能に気づいたかのように、泣きながら抱きついた。パトカーのサイレン音が徐々にその音量を増してきた。

足のロープを外され警察官に連行される男が急に大声で笑い出した。笑いながらひときわ大きな声で叫んだ。

「俺はやった。俺はやったんだ。バカにするな!」

そして、手錠をされた両腕を高く上げようとしたが、警官に引き戻され同時に脇の下に激しい肘打ち受けた。男は胃の底から絞り出すようなうめき声を出し、引きずられるように連行されていった。担架から少しだけ出ていた女性の手は驚くほど白く、多くの人々の息をのむ音が聞こえてきそうだった。ロビーは不自然な緊張感とささやかな安堵に包まれていた。そして、多くの人が一様に寡黙だった。

昇の方に近づいてきた亜弥に

「助けてくれてありがとう」

と、美優が小さな声で言った。

「特に美憂だからしたわけじゃない。人は理不尽に殺されてはいけない」

それを聞いた美優は

「何を言ってるの、現実に多くの人が理不尽に殺されているじゃない。六年前には大阪で、八人もの小学生が殺されている。神戸のJRでたくさんの人が理不尽に死に、東京でも、長崎でも一度に何人もの人が殺されているのよ。それを誰も助けることが出来なかった。今日だって……あなたはそういう人のすべてを救うことが出来るの?なぜこんなバカバカしいことが起きるの!」

美優は、叫んだ。そして、子どものように大声で泣いた。昇には、美憂の言葉が、決して亜弥に向けられたものではないと思った。美優は、目の前のこの不条理ないくつかの死と、自分に降りかかろうとした唐突な死の危険を目の当たりにして、次つぎと湧いてくる怒りとか、悲しみとかをうまくコントロールすることが出来なかったのだと思う。亜弥は、いつものように、意識的なのか無意識なのか、まったくそれには答えなかった。その代わり「そんなことは私が答えるべきものではない」という目を一瞬だけ美優に向け、昇が忘れてきたクリスマスプレゼントを昇に手渡すと人混みに紛れた。

後半のステージが完全に飛んでしまったコンサート会場を、二人はやっと出ることができた。薄明かりに浮かぶ広場の時計は十時を回っていた。路上ライブのアーティスト達も、数時間前に溢れかえっていた観客も今はいない。月の無い空に無数の星達が、冷たく澄んだ大気を通して、無関心に輝いていた。控え室でしばらく休んだ美優は落ち着きを取り戻していた。

「何だか、何もかもウソみたい。でも、ウソじゃないのよね。あの二人は死んでいた。二時間前にはコンサートを楽しんでいたのに……」

「死んだとは限らないよ。病院に運ばれたから助かる可能性だってあるはずだよ」

昇だってそんな風には思っていないのに、美憂にはそう言わざるを得なかった。あの二人は確実に即死状態だった。一瞬しか見ていないが、素人の昇にもそんなことはわかる。

「何故あんなひどいことをしたの。あんなひどいことが何故できるの?」

昇は黙っていた。そんなことは誰にだってきちんと答えることができないんだ。あの男にだって。と、昇は思う。それは、今の社会が何故このようになったのかを特定出来ないのと同じように。二人は星空と地面を交互に見ながらしばらく黙って歩いた。昇がコートの左ポケットに手を入れると小さな箱があった。亜弥が昇に渡した箱だ。美憂が以前から欲しがっていたipodシャッフルの入った小箱の存在に気づき、ポケットから取り出した。

「すっかり忘れていたけどクリスマスプレゼント。中学生に贈るようなささやかな物で申し訳ないけど」

少し照れながら美憂に渡す。

「ありがとう。そうね、今日はクリスマスだものね。私からもプレゼントがある」

クリスマスバージョンに包装された箱を差し出す。

「ありがとう。何かな?」

「あなたが欲しがっていたレンズよ」

ipodシャッフルの何倍もするプレゼントを受け取り、昇は複雑な気持ちになった。今度は美憂が落とさないうちに、広角レンズの入った箱を大事に受け取った。今日の一日に終わりに仄かな温もりを感じて昇は少し心が落ち着いた。美優もきっとそうだと思う。昇の肩にそっと頭をもたれかけた美憂の小さな吐息を聞いて昇はそう思った。満天のクリスマスの星達は、相変わらず無関心に輝いていた。

(第四章 完)

<参考文献>

「心理用語の基礎知識」一九九二年 有斐閣ブックス

「誰でもよかった殺人が起こる理由」加納寛子 二〇〇八年 日本標準ブックレット

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2012年5月14日 (月)

猫の額 改造計画 ついに完成!!

連休の暇に任せて始めた改造計画(?)

(before)

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(途中の作業)

結構いろいろな道具が要ります。

 

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そして、ついに、この土日でやっと完成しました。

(after)

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ホントにささやかな改造なのですが、我ながら満足のいく結果でした(^^)。

小石を取り払い、固まる砂を水で溶いて塗り、その後に、庭の敷石「クレイバーストーン(?)」を敷き詰める。

崩れないように、板でブロックする。その板を竹の杭で止める。2枚の板をボルトでつなぎ、ペンキで色塗り。

ムカデが来ないように、ムカデよけの薬品を散布等々(この作業中にムカデを4匹も発見し、退治しました)、道のりは苦難の連続でした(^^;)

昼寝をしていたうちの奥さんを無理無理起こしてみて貰いました。

「あーら、なかなか良いやん!!」

との、お褒めの言葉でした。

僕の仕事を褒めることは滅多にないので、褒めて貰えてうれしかったです。母の日のプレゼントをしたせいもあるのかな?なんて勘ぐったりしてしまいました(^^;)。

僕の父親がタイル屋さんだったので、その職人気質を引き継いでいるのかも知れない、などと思っています。そういえば、高校や大学の時に、父の仕事の手伝いをさせられていました。案外役に立ったのかな。やれやれ。

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2012年5月13日 (日)

1日一食ダイエット、エエーほんまか!?

昨日、大学時代の友人に、卒業以来初めて会いました。

彼は、僕を見て「おまえ、少し太ったな」と言います。

「ええー!!、そう?」

とても意外な感想だったのですが、考えてみたら、学生の頃は今よりも5㎏ほど痩せていたのです。

でも、僕にしたら、この1年間で10㎏もダイエットしたので、かなりスリムです。チノパンもウエスト73㎝を穿いています。

彼は僕に次のような忠告をしてくれました。

「1日一食ダイエットというのがあって、朝・昼ほとんど食べないで、夕食は好きな物を好きなだけ食べたら痩せるぞ。それに、免疫力もアップするんだ!! 鶴太郎も実践してあんなに痩せたんだぞ!!」

と、言います。そういえば、そんな話をテレビで見たことがあります。

でも、どう考えても、それは、不自然だと思うのです。それに、その友人のお腹を見たらポッコリお腹が出てるし、

「おまえも実践してるの?」

って聞いたら

「もちろん!!」

と言います。

僕はやはり信用しないことにしました。

一番単純に考えたら、摂取カロリーよりも200キロカロリー程度消費カロリーを多くしたら1年で10㎏程度体重が減るはずです。とても単純な計算です。僕はやっぱり、こちらの方を信用します。彼には気の毒ですが(^^;)

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2012年5月12日 (土)

オークションに挑戦?

ヤフーオークションで買い物をしていると「やったー!」というものもあるし、「エエー、それはないよ(T_T)」という物もあったりで、なかなかスリルがあります(^^;)。

今度は買う方でなくて、売り手になろうなんて、大それた事を考えています。

まず、手始めは KAWAIのキーボードです。

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結構古いのですが、部屋の中でしか使っていないので、全然痛んでいないので、1万円位で売れるかな?なんて皮算用しています。

その次はこれです。

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Micro Pianoというピアノ音源です。

この音が好きだという人も結構いたそうなのですが、今はどうかな?今時この手の音源を使っている人なんて居ないだろうなー。でも一応 5千円位で出してみようかななどと考えています。

そう、考えている内が楽しいのかもしれません。

それにしても、こういうガラクタがまだまだたくさんありました。なかなか片付きません(>_<)

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2012年5月 8日 (火)

連休、暇に任せて、猫の額改造計画……ううーん

連休もいよいよ終わってしまいました(グスン)。連休最後の日の話題になります。

 

連休も終わりに近づき、特に予定も無いので、うちの狭ーい庭の一部改造に着手しました。

ベランダの下の、凸凹になったブロックや小石が邪魔で、何とかしたいと、以前から思っていたのですが、なかなか出来ませんでした。平らにして、砂を敷き、小さな庭石を敷き詰めようという計画です。

とりあえず、今あるブロックや、小石などを取り払い、平らにならす作業から始めました。

僕の大嫌いなムカデとか、出てくるだろうなーなどと予想し、殺虫剤も用意していました。

うおおおーーーー!!

ひええーーーー!!

2回ほど叫んでしまいました。

大きなムカデが2回出てきたんです。隣近所の人はきっと驚いたと思います(^^;) うちの奥さんも飛んできました。

予想していたとは言え、2回のムカデ出現で、すっかりテンションが下がり、とりあえずブロックや小石を撤去し、枯れ葉の掃除が終わった段階で、今日はやめました。

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(撤去したブロック類です)

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(土だけになりましたが、一応板1枚置いています)

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(これを敷き詰める予定です)

そして、夜にはムカデの夢を見てうなされてしまいました。

ネコの額ほどの狭い庭の片隅なのに、とても大変でした。

京都のお寺の庭の手入れなど、どうしているんだろうなーなどと、思いをはせてしまいました。

ご苦労様です。

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2012年5月 6日 (日)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」第四章 連載17

「何か飲もうか。ロビーに出よう」

美憂が頷き、二人はそろって席を立つ。ロビーに出ると、売店に並ぶ人、ソファーで飲み物を飲む人、談笑するカップル。多くの人が、短い時間をそれぞれの過ごし方で寛いでいた。昇は売店に並ぶ美憂を見送ってからトイレに向かった。左側の長い列の女性達をチラッと見て男子トイレに入る。男子トイレは驚くほど空いていた。

手を洗い、ハンカチを出したとき、売店の方から鋭い悲鳴と胃を鈍く突き上げるような異様で不快な気配が伝わってきた。

昇は美優が気になり、トイレを出て走った。悲鳴を上げながら昇の方に走ってくる何人かの女性とぶつかりそうになりながら昇は売店を見た。入り口と売店のわずかな距離に二人の女性が血まみれで倒れていた。一人はグレーの制服を着たスタッフ。俯せに倒れた身体の下から血液が床に流れ出している。もう一人は白いセーターを着たこのコンサートの観客の一人。白いセーターの胸の真ん中から血液がしみ出し、赤の模様が急速に大きくなっていく。足元に立つ連れ合いの男は、ぽかんとして女性をぼんやりと見つめている。そして、すぐ側にあの男が居た。黒いキャップに黒いダウンジャケット。ジーンズに黒いスニーカー。右手に持った、先の鋭いサバイバルナイフは血液と脂で濡れていた。刃背が鋸刃になった何の飾り気もないサバイバルナイフは男に馴染んでいた。男は少し笑っているように見えた。男は売店に近づいてゆく。恋人を守ろうとして、男を制止しようとした若い男性が、突きだした右手を切られた。切り裂かれた白いダウンの袖口から小さな羽毛が飛び散り、異様なほどゆっくりと舞い落ちる。うなるような叫び声をあげて、男性は傷ついた腕を押さえて腰を引く。もうすっかり戦意を無くしている。男は、サバイバルナイフの刃を寝かせると、真っ直ぐに美優に向かって行く。その動きは決してゆっくりではないのに、昇にはひどく緩慢な動きに見えた。大きく目を開けた美優の顔が一瞬見えた。昇は体内の空気をすべてはき出してもまだ足りないほどの大きく、鋭い声で美憂を呼んだ。それは、美憂の名を呼ぶというよりは、固有名詞かどうかも判別できない鋭い叫び声のようでもあった。それと、ほとんど同時に、血の付いたサバイバルナイフのとがった刃先が美憂の胸に向かって突き出された。男の横顔は完全に笑っていた。昇は男に向かって飛んだ。

十二月二十四水曜日。クリスマスイブ

12/24 5:00 ねむい

12/24 5:15 頭が痛い

12/24 5:30 明日の予報は雨 でも、何か良いかも

12/24 5:50 途中で捕まるのが けっこうしょぼい

12/24 6:00 「いつかやると思ってた」そんなコメントをする奴がいたら、そいつはおれの理解者だ

十二月二十五日木曜日 クリスマス

12/25 19:30 雨、すっかりやんでる すばらしいことだ

12/25 19:33 オレ、すっかり病んでる すばらしいことだ

12/25 20:10 時間でーす

(つづく)

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2012年5月 5日 (土)

修理代 4万7千円 ええー!!

BDレコーダーにディスクを入れて再生しょうとしたらエラーが出て、トレイが半分開いたまま動かなくなってしまいました。

ディスクは半分見えているのですが、まったく動きません。

IMGP0645

※これは修理後の写真です

Pソニックのサポートセンターに連絡すると、3年経っているので、修理代がかかるかも知れないので、販売店の5年保証にはいっているならそちらに連絡した方が良いとのこと。

「5年保証?入っていたかなー?」

通常、5年保証には入らないので、たぶん入っていないはずです。

連休中にもかかわらず、J新電器の修理がすぐに来てくれました。

奥の方に、以前から見つからなかったディスクがはさまっていたらしく、それが引っかかっていて今回のトラブルになったようです。

トレイが破損していて、トレイを交換しました。

「修理代は4万7千円になりますが、5年保証に入っておられるようなので、今回は無料です」

「ええー!!」

と、驚き、次の瞬間

「ああー、良かった!!」

一瞬こわばった両肩がふっと下がりました。

そういえば、勢いで5年保証に入ったなーと、思い出しました。

別に5年保証の宣伝をするわけではないのですが、今回はホントに助かりました。

こういう事ってあるんですよね。やれやれ。

みなさんは5年保証って入っていますか?

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2012年5月 4日 (金)

ジムを貸し切ったぞ!!

ゴールデンウィークもいよいよ終盤ですね。

今日の午後、少しゆるんだ身体を鍛えようとジムに行って来ました。

ジムに行ったら僕一人でした。

ずーっと一人でした。

「○○さん、今日は貸し切りですから特別料金をいただきます」

と、スタッフの言葉。

「ええー、あはははー(^^;)」

そんなジョーダンが出るほど、2時間位誰も居なかったのです。こんなことは初めてでした。

どんなマシンも待つこと無くストレス無く自由に使うことが出来ました。

数年に1度位はこんなことがあるのかもしれません。

でも、考えてみたら、連休に暇なのは僕くらいなのかなって、ちょっと複雑な気持ちでした。

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2012年5月 2日 (水)

良いもの 見ーつけた!!

スーパーオートバックスに洗車グッズを買いに行ったときです。

ワゴンの中に特別セール品が置いてありました。

そこで見つけたのがこのスピーカーです。

P1050181P1050182

車の中でデジタルオーディオを聞くことができる用途として作られているようですが、パソコンにUSBで接続して、ヘッドホン端子につないでノートPC用の外部スピーカーとしても使えます。結構良い音が出ますよ。デザインもなかなかオシャレです(きっと)

USBで電源も取れるし、乾電池でも使えます。車のシガーライターからも電源が取れます。

お値段ですが、通常、ここでは3000円で売られていたものですが、な、な、何と……

500円!!

だったのです。

もう、すぐに買いました。

たまーに、こういう掘り出し物があるんですよね(^^)

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2012年5月 1日 (火)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」第4章 連載16

コンサート会場まで、地下鉄で三駅。地下鉄はこの時間、まだそれほど混んではいなかった。少し歩いて来たせいか、暖房がむっとして不快だった。つり革につかまり、何気なく目の前に座っている女性を見る。仕事帰りのOL風で、右手にケータイ、左手は膝に載せた紙袋を押さえていた。紙袋からリボンの付いた小箱が見えた。それを見て、昇は思い立ち、つり革をはずし、黒いビジネスバッグの中を確認する。美憂に渡すはずのクリスマスプレゼントがなかった。忘れないように昨夜からキッチンのテーブルに置いていた。そこまでは良かったのだが、朝、カバンに入れるのを忘れてしまったのだ。昇は心臓が痛くなるのを感じながら自分自身を責めた。コンサート会場がある駅名のアナウンスで我に返り、後悔を引きずりながら電車を降りた。

コンサートホールは、木立で覆われた、大きな公園の中央にあった。あちこちの木立の下では、ギター一本、キーボード一つの若者の路上ライブが見られた。いつの日か、中央のホールの舞台に立つことを夢見るような、控えめだが、熱い思いが伝わってくる。今日出演のアーティストは年令もジャンルも様々で、それに対応して観客の年齢層も様々である。それぞれが、それぞれの歌への思いを描きながらまだ十分時間があるのに、急ぎ足で入り口に向かう。

昇は、すっかり暗くなった公園を進み、コンサートホールに近づく。辺りの木立にはLEDの光のディスプレーが無数に散りばめられていた。クリスマスであることを改めて確認し、一定時間の間隔で点滅を繰り替えすLEDの明かりを楽しんだ。美憂のプレゼントのことは、昇の頭から消えていた。ホールの玄関までの階段を上がると、三つある入り口すべてに行列が出来ていた。時間は少し早いが、昇は打ち合わせ通り、関連グッズ売り場前で美憂を待つことにした。あんなに大きな音で聞こえていたラウドスピーカーの案内の声はいつの間にか雑踏のノイズに解け合って、本来の意味を失っていた。待っている間、昇は、今日出演するアーティストのことや、コンサートが終わったらどこの店で食事をしようかなどと取り留めなく考えていた。

「まったく、全然気づかないんだから。相変わらずね」

急に腕を取られて、昇は美憂に気がついた。

「やあ、意外と早かったね。七時ぎりぎりかと思った」

気づかなかった言い訳にもならないと思いながら昇は言った。美優は黒の細身のコートに淡いブルーのマフラー。いつもより幾分華やかに見える。昇は美憂にチケットを渡し、そろって列に並んだ。列の人混みは一様にテンションが高く、うわずった空気が漂っている。

「チケットありがとう。このコンサート本当に来たかったのよ。うれしい。感謝してます」

と言って、昇の左腕にすがりつく。

「あら、六千八百円。意外と安かったのね」

真面目な顔で美憂は言う。このチケットを取るのに、永遠に続くリダイヤル作業を繰り返し、何回無機質な自動応答音声を聞かされたか……口には出さないが、昇は少しムッとして思った。入り口の、ほとんど形式的なカバンチェックを通過してホールに入る。廊下に置かれたベンチは、どこも空席はなく、事前に腹ごしらえをしながら、贔屓のアーティストの話題に夢中なグループで埋め尽くされていた。予めネットで調べていたので座席を見つけるのに昇はほとんど迷うことはなかった。場内のエアコンは適度で快適だった。ステージのほぼ中央にあたるスタンド席には、開演三十分前のこの時間まだまだ空席があった。下のアリーナを見下ろすと、たくさんの入り口から、絶えず人の列がそれぞれの座席を目指して動いている。野球場のドームほどの広さを持つこのホールのアリーナだけでも球場のダイヤモンドが優に入るほどの広さを持っていると思われる。ざわざわとした喧噪と無数の人の流れ。これがやがてぴたりと動きを止め、呼吸音さえ聞こえない短い静寂に包まれるはずだ。そして、その後の大歓声。昇はこの時間の、少し興奮を伴う、ざわざわとした雰囲気が好きだった。

「今日は昇の好きなアーティストが結構出てるわね。何だかうれしそうよ」

「たしかに。苦労してチケットを買った甲斐があったよ。日本のアーティストも、技術的にもサウンド的にも随分優秀だからね」

「昇がコンピュータで作る音楽もなかなか良いわよ。SEとしての能力もあるけど、作曲家としての才能もなかなかだと思うわ」

お世辞を言う能力の欠如は美憂の長所でもあり欠点でもある。それを熟知している昇はしきりと痒くもない鼻をかいたりする。

「いつも不思議に思うんだけど、どんな時に曲が浮かんだりするの」

「君と会った時かな」

気の利いたセリフとはとても言えないと思いながらも昇は照れずに言った。美憂は

「ふん、ふん」

まんざらでもなさそうだ。

「でも、音楽って不思議よね。基本的に七音しかないのに、あんなにたくさんの美しい曲や歌が出来るんだものね。昇の作る曲は、名曲のエッセンスを入れて、曲想をプログラミングすれば、後はコンピュータが曲を作ってくれるというものではないわよね。もちろん」

「もちろん違うね。コンピュータをよく知らない人の一割位はそう思っているかもしれないけどね」

昇は右の口許を少し歪めながら言う。

「曲作りは、コンピュータを使っても使わなくてプロセスは同じだよ。オーケストラやバンドの代わりにコンピュータが演奏してくれるのが大きな違いかな。楽曲はくり返しが多いからコピー、ペーストも楽かな」

昇は鼻をかきながら続ける

「あとはセンスの問題。これは音楽だけじゃないけどね。いずれにしてもとても根気の要る仕事さ」

「ふん、ふん」

美憂はさほど興味がなさそうに聞いている。昇は美優の横顔から、昇を見直した兆しを微かに感じた。気のせいかと思いながらも……

薄暗いステージの左手にスタインウエイのグランドピア。中央後部にドラムス。右手にギブソンのレスポール、ベース、エレアコのギター、キーボードの順に、すでにセッティングされていた。ステージ上部の大型スクリーンにはMerry Christmasの大きなロゴがあった。観客の期待と、アーティストの緊張感がホールの大空間を適度の均衡を保ちながらせめぎ合っているようでワクワクする。誰が指示したわけでもないのに、客席のざわめきが少しずつフェードアウトしていく。

やがて辺りがすーっと暗くなり舞台の右手にスポットが当たる。同時に、会場の空気が圧力に耐えきれず、破裂したような大歓声が起こり、オープニングアクトの若い男性が登場する。韓国出身だという彼は、ステージ左手に置かれたスタインウエイに近づき、静かに椅子に座る。左手のB♭の分散和音に乗って、イントロのメロディーが流れ出すと、大歓声は一瞬にして天井に吸い込まれ、無音の緊張が走る。静かで叙情的なイントロの後に、音量を絞った透き通る歌声がホールの隅々まで静かに染みわたっていく。大ホールは、彼の弾くピアノの穏やかな旋律と、よく通る歌声以外何も聞こえない。昇は目を閉じて、彼の作り出す音達に集中した。隣の美優は、昇が持参した大型の双眼鏡に釘付けだ。美優の興奮が右手を通じて伝わってくる。やがて繊細だが、歯切れの良いコードバッキングに変わり、Bメロに移る。最後に高音に上りつめていく分散和音の最後のB♭の音が彼の右足が上げたペダルによって消されると、大きな拍手が響き渡った。

三人のアーティストの演奏が終わり、コンサートも中盤に差しかかった。前半のファイナルアクトは昇の好きなアーティストだった。白のシンプルなワンピースに同色のパンプススニーカーの彼女は最小限のバンドを従えて歌い出した。彼女の得意な、クラシックを編曲したバラードが流れる。昇は右足で小さくリズムを取りながら、彼女を見つめ、聴覚のすべてを、ホールの至る所に設置されたモニタースピーカーに集中させた。正面の大型ディスプレーには全身からゆっくりズームアップされた彼女の上半身が画面一杯に広がった。バックスクリーンにはモノトーンのイタリアの街風景が映し出され、やがて画面が青一色になり、曲が変わった。

8時15分。20分の休憩を告げるアナウンスが流れ、場内が明るくなった。緊張から解きほぐされた解放感と、感動の余韻とで、場内には、投げ入れられた小石が穏やかな水面に波紋を作るように、いくつもの小さなノイズが同心円状に広がる。やがて、ロビーに移動する人々が三々五々動き出す。

「何か飲もうか。ロビーに出よう」

美憂が頷き、二人はそろって席を立つ。ロビーに出ると、売店に並ぶ人、ソファーで飲み物を飲む人、談笑するカップル。多くの人が、短い時間をそれぞれの過ごし方で寛いでいた。昇は売店に並ぶ美憂を見送ってからトイレに向かった。左側の長―い列の女性達をチラッと見て男子トイレに入る。男子トイレは驚くほど空いていた。

手を洗い、ハンカチを出したとき、売店の方から鋭い悲鳴と胃を鈍く突き上げるような異様で不快な気配が伝わってきた(つづく)

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