小説 「3・3㎡/2」連載3
「わざわざすみません。ホントにありがとうございます。娘も喜びます」
祥吾は、そう言って花南を迎えてくれた。翌週の金曜日の夕方のことである。花南のマンションと同じ方向なので、土日にかけて、一泊の小旅行の予定もあり、少し早く仕事をあがらせて貰い、帰宅の途中に立ち寄った。五階建ての小さなマンションで、それぞれの部屋はさほど広くなさそうだが、二人が住むには十分なのであろうと花南は思った。
「さやか、お花屋さんがお花を届けてくれたぞ」
祥吾が部屋の奥に声をかけた。
「やったー!」
どたどたと、大きな足音と共に、二つに髪を括った、ピンクのジャンパースカートの小さな女の子がいっぱいに微笑んでやって来た。
「さやかちゃん、お誕生日おめでとう」
花南が、コスモスとオンシジュウムを中心にまとめた花束を渡すと、
「うわー、きれい。お花屋さんありがとう」
花南を見つめる大きな瞳は、今日仕入れた季節外れのトパーズ色のアネモネを連想させた。
「はい、これは私から」
ディズニーのミスバーニーをデザインしたポシェットを手渡した。紗也香は、大事そうにポシェットを抱え、奥の部屋にもどった。
「どうもすみません。お礼と言っちゃ何ですが、もし、よかったら、いっしょに晩ご飯を付き合ってもらえませんか」
思わぬ誘いに、花南は少し戸惑い、そしてきっぱりと
「お付き合いしましょう」
両手を後ろに組み、やや胸を反らせて、笑いながら言った。普段の花南なら、絶対に断っていたはずなのに。(つづく)
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コメント
何て自然な展開でしょう。(^~^*)
いい感じなのに、黒い影が花南の身に
忍び寄っているんですよね...
投稿: casa blanca | 2012年6月 1日 (金) 15時16分
花南の身に黒い影が忍び寄っているのですか?
そんな怖いストーリーにしないでくださいね。
投稿: くるたんパパ | 2012年6月 1日 (金) 18時39分
いきなり接近?
なにか不穏な影。
投稿: ブルー・ブルー | 2012年6月 1日 (金) 20時59分
casa blancaさん
いつも読んでいただいてありがとうございます。
>いい感じなのに、黒い影が花南の身に
忍び寄っているんですよね
そうなんです
良かったらまた続き読んで下さいね。
今回は短かったのですが、この位が適度かななんて思っています。どうでしょうか?
投稿: モーツアルト | 2012年6月 2日 (土) 22時11分
くるたんパパさん
いつも読んでいただいてありがとうございます。
そんなにこわいストーリーではないので、ご安心ください。スリーリーに対してお気づきのこととがありましたら、是非仰って下さいね。
新しいお話もまた考えないといけませんね。今、ヒントを探しています。
投稿: モーツアルト | 2012年6月 2日 (土) 22時16分
ブルー・ブルーさん
いつも読んでいただいてありがとうございます。
>いきなり接近?
なにか不穏な影。
接近したことによって何か怖いことが起きるわけではないので、安心して読んで下さい
続きもよろしくお願いします<(_ _)>。
投稿: モーツアルト | 2012年6月 2日 (土) 22時19分