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2012年7月 9日 (月)

小説 アンドロイド「AYA/2nd」第5章 連載12

「わかったぞ。工学研究棟のEだ。それも地下のようだな」

三宅が指さすディスプレイには、3Dで描かれた研究棟の模型が映し出されていた。

「そこは遠いのか?」

「いや、割と近い。この建物から三棟東に行った建物で、イーストウイングという名前だ」

昇は時計を見る。十時だ。後三時間。昇がコートを羽織ると

「ちょっと待って。このジェミノイドをつれて行った方が良い。いろいろと役に立つと思う。研究室はパスワードの鍵が掛かっている部屋が多い。このジェミノイドはパスワードを解析する。亜弥が見つかった時も、このジェミノイドがいろいろと助けてくれるはずだ」

「このジェミノイドは歩けるのか?」

「いや、まったく歩けないことはないが、三歳児程度の歩行能力しかない。しかし、体重は僕の半分だ。おんぶできない重さではないだろう」

昇は三宅の細い身体とジェミノイドを交互に見て

「そうだね。大丈夫のようだ。でも、大人をおんぶして歩くってちょっと不自然じゃないか」

「大丈夫だと思うよ。この時期、学生はほとんど居ないし、そうでなくても、この辺りの研究棟には学生が少ない。仮に誰かにあったとしても、ジェミノイドの足に包帯を巻いていたら、それほど不自然じゃないと思うよ」

そう言って、三宅は白いタオルを渡した。

「僕はここでジェミノイドを遠隔操作する。もちろん君の様子もジェミノイドを通してモニター出来る。何かあったら僕が対処する。気をつけて」

後三時間

確かに、大人の人間をおんぶしているのに比べると軽い。三宅の言うように半分位の体重なのだと思う。それにしても、やはり不自然な感じがする。まあ、今はそんなことを気にしている場合では無いと思い直して昇は三棟先の研究棟を目指した。適度な間隔で建てられた建物は薄い煉瓦色で、建物の周りに植えられた常緑樹に馴染んでいた。木立を抜けてくる冷たい風が、うっすらと汗が浮かんだ額に心地良い。突然背中のジェミノイドがしゃべった。

「どうだい。それほど重くはないだろう。研究の成果だよ。今は十分な歩行能力がないから、出来るだけ軽くしないといけない。ここまで重量を減らすのは大変だったんだ。ところで、亜弥がいると思われる部屋は、地下一階。エレベーターを降りて右手の突き当たりの部屋、B一〇三だ。たぶんロックされていると思うから、解除はジェミノイドにまかせてくれ。その部屋は四室になっていて、入ってすぐの部屋の右隣に亜弥がいると思う。コンピュータが停止している状態なので、そのままでは亜弥に進入出来ない。とりあえず仮起動させる必要がある。今は人間で言うと仮死状態だ。微力の電流と信号を亜弥に送り込まないといけない。それはジェミノイドにやらせる。それから僕がネットワークから進入する。ハッキングだよ。うまく行けば亜弥を目覚めさせることが出来るかも知れない。君が話していた真崎という男が居るかもしれない。どう考えても君に協力的であるはずはないから十分気をつけろよ。成功を祈る」

昇は三十キロ近くあるジェミノイドをおんぶしながら聞いていた。微かな違和感はあるが、まるで本物の三宅をおんぶしているような気がしてくる。背中に感じる温かさも、感触も人間のそれであった。

「わかった。気をつけるよ。誰もいないことを祈るよ。ところで、このジェミノイドは喧嘩は強いのかい?僕が危険な目に合ったら助けてくれるのかな?僕は武闘派とは対局にある人間だから腕力にはまったく自信が無い」

少し間をおいて

「残念ながら特別なプログラミングはされていない。しかし、アンドロイドは予想もしないところで思わぬ力を出すこともある。まあ、当てには出来ないけどね。出来るだけ速く亜弥を目覚めさせるから、もし何かあったら、それまでは君が頑張ってくれ」

予想通りの答えである。

「やれやれ、そうだよね。そんなことまで期待できないよね」

そう良いながら、ヨイショっと、少しずり落ちてきたジェミノイドを上に持ち上げた。そして、大きなため息を二度ついた。亜弥のすごさを改めて思い、そして、胸の奥の方がまたキリッと痛んだ。(つづく)

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コメント

30㎏は手荷物と重いけど、
おんぶするとそれほど重さを感じませんよね。

(おんぶするという行為に何故かとても興味があります。
人間らしい感じがしたり、動物的だったり…。)

無事に亜弥と再会できるといいのですが…。

投稿: くるたんパパ | 2012年7月10日 (火) 04時48分

私もくるたんパパさんに同感でした。

ジェミノイドという進化系ロボットなのに、
おんぶして移動という、ちぐはぐさが
面白かったです。(^~^*)

危機一発で、亜弥が目覚め、昇と
ジェミノイドを守ってくれるのか、
はたまた、ジェミノイドが思わぬ力を発揮
するのか、次回のお楽しみですね。

投稿: casa blanca  | 2012年7月10日 (火) 06時50分

くるたんパパさん
ありがとうございます。どうやって移動させるのかをあれこれ考えて、おんぶということにしました。これだったらあり得るかなと思い、話を進めました。ずり落ちてきたのを「よいしょ」と持ち上げるところもちょっと工夫したつもりですhappy01

投稿: モーツアルト | 2012年7月10日 (火) 11時08分

casa blancaさん

>ジェミノイドという進化系ロボットなのに、
おんぶして移動という、ちぐはぐさが
面白かったです。(^~^*)

そうなんですよね。いろいろと悩んだ挙げ句おんぶにしました。何だか微笑ましいというか、自然ではないけど、あり得るという感じかも知れません。車で移動でも良かったのですが、おんぶになってしまいました。

投稿: モーツアルト | 2012年7月10日 (火) 11時12分

そうか、三宅さんは仲間ということですね。
ジェミノイドって、遠隔操作もできるんだ。
これからの展開が楽しみです。

投稿: ブルー・ブルー | 2012年7月10日 (火) 18時52分

ブルー・ブルーさん
実在のジェミノイドも遠隔操作で、朗読をしたり、演技をしたりするんですよ。平田オリザさん演出の、女性のジェミノイドの演劇も上演されました。世の中進んでいるんですねthink

投稿: モーツアルト | 2012年7月10日 (火) 22時42分

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