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2014年10月31日 (金)

小説「Angel/小さな翼を広げて」~その8~

「僕は、あの時とあまり変わってないと思う。森田さんと別れてから、また一人だったけど、高校に入って友だちが二人できた。加藤君と結城さんって言うんだ。吹き矢もしたし、バンドも作って練習した。彼らのお陰で比較的安定した高校生活を送ることが出来た。君はどうだった?」

森田さんは少し考えてから

「そうね。いろんなことがあったし、少しの時間でとても要約できないわ。でも、無理に要約すると、あなたと同じように比較的安定した生活だったと思う。大学で教職をとってこの県の採用試験を受けた。私達が小学校から中学校まで過ごした場所に帰りたいと思った。少なくとも近くに戻れるような気がしたの。そして、この町に採用された。採用が決まった時に、何の根拠もないけど、これで立川君に会えると思った。そして今日会えたわ」

笑った口許からのぞいた八重歯と、スーッと頬を掠める初夏の風のような目元もあの時と同じだった。

「今日はこれから会議があってゆっくり話が出来ないの。今日の夕方空いてる?」

「僕は大丈夫だよ。いつも大概一人で過ごしているから」

「良かった。じゃー、六時に駅前のスタバで良い?」

僕の返事も聞かずに、森田さんは立ち上がって「教務必携」を抱えて部屋を出て行こうとしてくるっと振り返り

「ホントに立川君なんだ!」

心から安心したような顔を僕に向けて部屋から出て行った。

 

十五分前にスタバに着いた。レギュラーコーヒーを受け取って二人掛けのテーブルに席を取る。森田さんはまだ来ていなかった。仕事帰りや、学生風の男女でほぼ満席だった。仕事や授業から解放された人々の顔は一様に明るい。コーヒーをふた口飲んで、文庫本を三ページ読んだ時に森田さんがやって来た。群青色のオーガニック(たぶん)コットンセーターと白いジーンズ。深い緑色の少し大きめのバッグ。腕時計を見るとちょうど六時だった。森田さんは膝の上にバッグを載せて僕をまじまじと見た。

「ホントに立川君なんだ……」

僕はこんな風にしっかり見られたことがあまりないので、何だか落ち着かなかった。コーヒーカップを取って、ゴクンと音を立てて飲んだ。

「ねえ、立川君。あなたは今お付き合いしている女性は居る?」

唐突の質問だった。(つづく)

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コメント

こういうやり取りって
何だかドキドキします。
どうなるんだろう。
o(^o^)o ワクワク 

投稿: casa blanca | 2014年10月31日 (金) 17時52分

おはようございます

この先の展開が楽しみですねぇ。

小説の内容に関係かりませんが…。
教育実習は母校で行うのが当たり前でしたが、
いまの文科省の指導は母校で教育実習をしてはいけないと言う指導になっています。
実際に母校以外では受け入れてくれるのは難しいのにね。
文科省はたまに現実離れした指導をするときがありますよね。

投稿: くるたんパパ | 2014年11月 1日 (土) 05時34分

「ホントに立川君なんだ」と、繰り返される言葉で、森田さんの気持ちが、手にとるようにわかりますね。

投稿: 三日月猫 | 2014年11月 1日 (土) 10時04分

casa blancaさん、こんにちは。
いつもありがとうございます。
ワクワクドキドキする経験は久しくないので、せめて小説内ではと思っています(o^-^o)
わくわく、どきどきいいですねー。

投稿: モーツアルト | 2014年11月 1日 (土) 17時03分

くるたんパパさん、こんにちは。
いつもありがとうございます。

>文科省はたまに現実離れした指導をするときがありますよね。

ホントにそうですね。教育実習は、受け入れ校にとって、結構負担になりますから、母校だったら「まあ、しょうがないか」という感じで受け入れて貰えます。母校以外なんて、ホント大変です。

投稿: モーツアルト | 2014年11月 1日 (土) 17時07分

三日月猫さん、こんにちは。
いつもありがとうございます。

基本、同じ表現は重複させないというのが正しいと思うのですが、今回は効果があったかもしれません。
後編が思うように進まず、ちょっと暗礁に乗り上げそうです。

投稿: モーツアルト | 2014年11月 1日 (土) 17時10分

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