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2014年11月

2014年11月15日 (土)

小説「Angel/小さな翼を広げて」~その11~

「でも、ナイフを持って子どもの人質を連れて教室に立てこもったら先生達はどうするの?」

僕はそんな時はどうして良いのか想像出来なかった。

「不審者を発見したらまず放送するの。学校には居ない架空の先生の名前を呼ぶの。例えば『田中先生、お客様です。至急職員室にお戻りください。三番でお待ちです』てね。続けて三回放送するの。三番というのは三階という意味なの。それが合図よ。係の先生が警察に電話して、担任はすぐに他の子ども達を運動場に避難誘導する。男の先生達はさすまたを持って校長室にとりあえず集まるのよ。それから現場にかけつけ、みんなで遠巻きに犯人を取り囲むの。警察が来るまで時間稼ぎをするの。そして、隙を見て取り押さえるって校長先生は言ってたけど、そんなこと出来ないよね」

僕もそんなこと出来ないと思った。出来れば、森田さんがそんな目に遭わないようにと心から願った。レッサーパンダが僕らを見て、首を傾げる仕草をした。それを見てクスッと笑って森田さんが言った。

「ねえ、立川君。高校の時のお友達の話を聞かせて」

「高校の時の友だちと言えば、加藤君と結城さんだけだよ。君が興味を持つような話があったかな?」

ソフトクリームを少し囓った。

「吹き矢をしたり、バンドをやっていたって言ってたわね。それ、すごく面白そう。吹き矢ってどんな風にするの?」

僕は両手を挙げて筒を構える格好をして、プッと吹いた。

hukiya

「ヒューッと飛んで、的に突き刺さる。スリリングで、しかも健康的だ」

「ふぅーん、で、誰が一番上手だったの?」

「そうだね。結城さんかな? 彼女は僕らの後から始めたんだけど、僕らよりも上手くなった。熱心に練習してたなー。何か目的を持って練習しているみたいだった」

「目的って?」

森田さんはソフトクリームを少し嘗めた。

「例えば、吹き矢を的に当てる代わりに、物か、誰かに当てるとか……。つまり、吹き矢本来の目的のために」

「そうか、吹き矢って武器なんだよね。でも、誰に当てるんだろう?」

僕はちょっと考える振りをしてからソフトクリームを少し嘗めた

「さあ、誰だろう? でも、誰でも一人くらい吹き矢を当てたい人間っているんじゃないかな。例えば、中学生の時、僕をプールで沈めようとした田中君とか」

「そうね。いるかもしれないわ。そうやって心の中で何人かに吹き矢を当ててきたのかもしれない」

「森田さんもそういう人間がいるの?」

「いるかもしれないわ」

今度はコーンをがりっと囓った。(つづく)

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2014年11月14日 (金)

2等賞だよー!!

うちの近くのアルプラザというショッピングセンターでクジを引きました。

賞品が何なのかチェックもせずに、折角だからというだけでひきました。

お姉さんが三角のクジを開いてくれて

「おめでとうございます!! 2等賞でーす!!」

と言って、鐘を鳴らしました。

僕も驚いたのですが、僕の後ろの3人が一斉に

「おおおおーすごーい!!」

と感嘆の声を上げるのです。

僕は瞬間、ものすごく期待しました。

『テレビ?間に合ってるしなー。デジカメ?もういらないなー。冷蔵庫?3年前に買い換えたしなー。炊飯器?欲しいなー』

一秒位の間にいろんなことが頭に浮かびました。

「おめでとうございます。1000円の商品券でーす!!」

と言って、僕よりもうれしそうに渡してくれました。

『やっぱりね』

頭の中で膨らんだ風船が急にしぼみました。

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2014年11月13日 (木)

小説「Angel/小さな翼を広げて」~その10~

「私の学校は面白いのよ。歴史は古いけど、三年前に全面的に建て直しをしたの。立川君も見たように、建物もすごいでしょう。見た目どこかの有名な私立の小学校みたいよね。とても公立の小学校とは思えないでしょう。建てた当初はマスコミの取材がたくさんあったらしいわ。市のモデル校らしくて、新しい要素をたくさん取り入れているの」

「新しい要素?」

「そう。例えばね、どの学年も2クラスしかないので2クラス並んだ教室の前には多目的スペースというのがあって、そこと教室とを隔てる壁もないの。真冬の寒い時は取り外しが出来る壁を付けるけど、それ以外はほとんど壁が無いの。初めは少し落ち着かなかったけど、開放的でとても良いと思ってきた。休み時間には、クラスに関係なく、子どもたちはそこで遊んだり、本を読んだりするの。図書室も絨毯が敷いてあって、廊下を隔てる壁も無い。良いのか悪いのか分からないけど、寝そべって本を読んでいる子もいるのよ」

「へぇーすごいね。確かに日本の小学校としてはとても珍しいよ。僕もそんな雰囲気で小学校をすごしたかったなー。でも、全部の学校を建て直すとしたら大変な予算だよね」

「きっと、うちの学校だけで終わりなのよ。そんなにお金をかけるとは思えない。むしろお金を掛けないで学力向上みたいなことをするのよ。競争させて、順位を公表して……。お金を掛けないで教育が良くなる訳ないのにね」

少し厳しい表情をして足元の小石を蹴った。

森田さんはその後も、この学校特有のいろいろなことや、子ども達のことも話してくれた。

「私ね、委員会は放送委員会なの」

「委員会活動だね。僕は飼育委員会だった」

一瞬、飼育小屋のカモを思い出した。小さなたらいで水浴びをしているカモ。僕を親だと思ってずーっと付いて回るカモ。

kamo

(※イメージです)

森田さんは続けた。

「放送委員会は朝の音楽や、お昼の放送、下校の音楽をかけたりするのよ。最近、下校の音楽はAngelにしているの」

「Angel?」

「そう、サラという人のAngelよ。歌の無い曲だけのバージョンだけどね」

「放送委員会の先生が勝手に曲を選んで良いの?」

「何でも良い訳じゃないけど、常識的な曲なら大丈夫よ。委員会のささやかな特権ね」

そう言って少し笑った。左側にだけ出来るえくぼが可愛かった。それから突然

「昨日ね、訓練があったの」

「訓練って避難訓練? 地震とか火事とかの」

訓練と言えば、それ位しか思いつかない。

「そうじゃないの。不審者が学校に入ってきた時にどうするかの訓練よ。何年か前に大阪で何人もの子ども達が亡くなったり、ケガをした不幸な事件があったでしょう。そういうことに備えての訓練なの。不審者役の先生がボール紙で作ったナイフを持って人質の子どもを連れて教室に立てこもるという設定なの。もちろん、子ども役も先生がするのよ。それが妙に迫力があって何だか怖かった」

森田さんは眉を寄せて怖そうな顔をした。でも、その怖そうな顔も僕にはとてもチャーミングに見えた。

「でも、ナイフを持って子どもの人質を連れて教室に立てこもったら先生達はどうするの?」(つづく)

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2014年11月10日 (月)

小説「Angel/小さな翼を広げて」~その9~

「ねえ、立川君。あなたは今お付き合いしている女性は居る?」

唐突の質問だった。

「いない」

それから、少しだけ考える時間を置いて

「そういう機会はあったけど自分から進んで求めたことはない。大学の時は授業に出ることと、図書館で本を読んだり、映画館で映画を観ることで大半を過ごした。家に帰ると一人でギターを弾いて過ごした。土日は印刷工場でアルバイトをしていた。暗い学生生活だったかもしれないね」

「ちっとも暗いとは思わないわ。人にはそれぞれに過ごし方や楽しむ方法があるはずだし、誰かが評価するものではないわ。それに、立川君に、今、お付き合いしている人が居なくて良かった」

「どうして?」

「だって、今日から私が立川君とお付き合いしようと思っているからよ」

森田さんは、今日の日付を聞かれてそれに答えるようにごく自然にそう言った。僕は何て応えたら良いのかわからなかったがー今日の日付を言われてそれを自明のこととして受け入れるようにーそれを受け入れた。森田さんは思い出したようにバッグを椅子の上に置いてコーヒーを取りに行った。さっきの森田さんのセリフが、深い緑色のバッグの上にまだ漂っているような気がした。僕は深呼吸をしてそれを吸い込みコーヒーをひと口飲んだ。

その日以来、僕らは二人でよく会った。仕事が終わってからスタバで話をしたり、週末に居酒屋でお酒を飲んだりした。今までの僕の生活と随分変わったかもしれない。それは、モノクロの画像が水彩絵の具で少しずつ彩られていくような感じかもしれない。僕たちは休日に、近くの遊園地や植物園によく行った。遊園地はそれほどメジャーではないので、休日でも、何か大きなイベントでもない限りそれほど人は多くない。それも気に入ってるし、小さな動物園があることも気に入っている。レッサーパンダがモコモコと動き回ったり、きょうだいで(たぶん)じゃれ合ったりしているのを見るのが好きだった。僕らはバニラのソフトクリームを嘗めながら、コーンの最後のひと囓りを食べ終わるまで幸せな気持ちで見ていた。

softcream

森田さんはいつも、最初に僕のソフトクリームを嘗めてから自分のを食べ始める。僕は森田さんが嘗めたところから食べ始める。彼女はいつも職場の話をしてくれる。僕はそれを聞くのも楽しみだった。(つづく)

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2014年11月 7日 (金)

ミラクルムーン

「後の十三夜」の月は、年3回目となる珍しい「名月」。旧暦では3年に1度、「うるう月」を入れて季節とのずれを調整する。旧暦に従うと、今年は171年ぶりに9月にうるう月が入り、11月5日が2度目の「十三夜」となった。これが「後の十三夜」と呼ばれる。(毎日新聞11月5日より)

 

ということでミラクルムーンを撮影してみました。

P1050323_800x600

この日は曇り空で、雲の間から時折お月様が顔を覗かせます。それが良いのかもしれません。

「なんせ、ミラクルなんだからね。そう簡単には見せられないよ」

なんて十三夜のお月さんが言っているような気がしました。

 

中秋の名月の時にも思ったのですが、こんな風に写真なんて撮っていないで、高層ビルのラウンジでワインでも飲みながらぼんやりと鑑賞したいものです。

十三夜の月って曖昧でステキですね。

皆さんはご覧になりましたか。

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2014年11月 6日 (木)

リニューアル

ええー!こんなに綺麗になったの!?
ついに、その美しい姿にお目にかかれました。

駅を出たとたんに、真っ直ぐ先に綺麗になったお城が!

Himezijyou1

姫路城の大修復も最終段階に入り、今年は天守閣周辺をのぞいて見学することが出来るようになりました。

綺麗になったお城を見たいと思っていてなかなか行く機会がなかったのですが、やっと行くことが出来ました。

神戸の近くの大学祭を見て、さらに少し足を伸ばして姫路まで行きました。

お昼過ぎまで曇っていたのですが、姫路に着いた頃には日も差してきて良いお天気になりました。

白鷺城(はくろじょう、しらさぎじょう)とも呼ばれるこのお城は空を背景にすっきりと、その姿を誇ってるようでした。

だんだん近づいて、間近で見るとさらに迫力があります。

Himezijyou2

Himezijyou3


来年の3月にならないと天守閣の内部見学は出来ないのですが、僕は外から見た天守閣だけで十分満足でした。

歩いても暑くも、寒くもないこの時季、姫路城見学は最高でしたよ。

姫路の商店街はとても明るく綺麗で、たくさんの人で賑わっていました。

こんなレコード屋さんも健在でした。

Recordya


驚きましたねー

駅前ではライブもやっていました。

Himezi_live


姫路市はステキな街でした。機会があればもう一度行ってみたいと思いました。


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2014年11月 4日 (火)

大学祭そして、何と驚きの再会!Part2

今回は驚きの再会の方です。

姫路からの帰りに、大阪・心斎橋のI楽器店で弦を購入し、アコギを見ていると、USEDギターのショーケースの中にあのギターがあったのです。

s.yairi yd305

(※イメージです)

値段89,800円(税抜き)タグに「低音の重厚な響きと、高音の美しさ、そして、そのバランスの良さは絶品です」と書いてありました。

このギターは僕がこの夏に、買い取って貰ったギターなのです。査定をしてもらったら、35,000円とのことで、少し粘って37,000円にしてもらったのです。

何故、僕が売ったギターだとわかったかというと、まず全体の見た目です。随分長いこと付き合ってきたギターなので、すぐに分かります。そして、決定的な証拠はボディーの左下に小さな疵があります。

まったく同じ疵でした。昔の恋人に出会ったような気がしました。

それにしても、買い取り価格と販売価格のこの違いは!

このI楽器は全国にあり、ネットでも販売しています。ですから、この店で買い取ったギターをこの店で必ず販売するわけではありません。全国どこに行くか分からないのです。ですから、ここで再開したのはまったくの偶然だったのです。

それも、ホントは梅田の楽器屋さんに行くつもりが、たまたま足を伸ばしてこの店に来たのです。やっぱり不思議な縁を感じてしまいます。

 

男性と別れた女性が

「絶対に綺麗になって、あなたを後悔させてやる」

というセリフを言うことがあるのですが、このギターもそう言ったと思います。そして、僕は別れたことを後悔しました。

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2014年11月 3日 (月)

大学祭そして、何と驚きの再会!

このタイトルを見ると、大学祭で昔の恋人に遭遇するという感じなのですが、まったく違うのです。初めにお断りしておきます。すみません。

姫路に用事があったついでに神戸の近くにある某大学の大学祭に行って来ました。

曇りだったのですが、幸い雨は降らず幸運だったと思います。しかし、今年の大学祭はこの日の天気のように盛り上がらず、少し淋しい学祭でした。

フランクフルト(百円)で昼食前の小腹の空いたのを抑え、サブステージでライブを少し見ました。

1人で歌っていた地味なこの学生は歌もギターもなかなか上手で、フランクフルトを囓りながら聞き入ってしまいました。

live

ここでは、市民の模擬店もあり(こちらの方が盛り上がって元気でした)、手作りの物など販売しています。

そこでとても良い物を見つけました。まずはこれです。

ri-su

クリスマスリースです。これが何と八百円なのですよ!それも、百円おまけして貰って七百円でした。

これ、作るのに結構手間がかかるそうで(うちの奥さんも趣味で蔓の工芸品を作っています)こんなに安くは買えないそうです。

この時季に良い物を買いました。

次はこれです。

coasrar

布製のコースターなんだそうですが、ピック入れにしました。130円でした。

帰りに、大阪・心斎橋のI楽器店に寄ってギターの弦を買ったのですが、そこで思わぬ再会をしてしまいました。

そのお話は次回に。

もったいぶってすみません。

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