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2017年7月 9日 (日)

雪舟の庭

「芬陀院(ふんだいん)」と言う。これも東福寺の塔頭の一つだ。

お寺は参拝客が誰も居なくてひっそりとしていた。

玄関に入ると、女性が掃除機をかけており、僕らを見て慌てて掃除機を止め、

「あらあら、失礼しました。ようおこしやす。どうぞ、どうぞ」

と、気さくで軟らかな京言葉で挨拶してくれる。

二人で600円。ここの拝観料が一番安い。

本堂の長い縁側。その向こうに枯山水の庭園が。

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等間隔で開けられた障子の間には、座布団が2つずつ置かれていた。暫くの間、参拝者は僕ら以外誰も居ない。

時折、枯山水の庭から涼しい自然の風が吹く。長い縁側には等間隔に蚊取り線香が置いてある。うっすらと煙が上がり、懐かしい香りがする。

煙が揺れ、また真っ直ぐ上がる。その度に涼しさを味わう。

一人、二人、参拝客がやってきたが、みんな静かだ。

茶室が二部屋。その横には坪庭。窓からは、掛け軸状に切り取られた障子の間から、枯山水の庭が見える。

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手水鉢の一輪挿しが涼しげに咲いていた。

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入り口で頂いた案内によると、この庭は雪舟が作庭したもので、折り鶴を表現した石と亀を表現した石が置いてあると説明にある。

亀はすぐに分かったが(「頭を立てて泳いでいる様子」というのは妻に教えてもらった)、折り鶴はよく分からなかった。「こちらから見たら折り鶴よ」と妻が教えてくれた。なるほど、方向を変えると折り鶴に見える。

雪舟さんはそのへんも色々と考慮して作庭したのだろう。やはりただ者ではない。

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(手前が頭で、何となく折り鶴に見えませんか?)

いつの間にか、このお寺で随分時間を過ごしたようだ。数人居た参拝客も居なくなり、また僕ら二人になった。

少し狭いけど心落ち着く庭園、二つずつ並んだ清潔な座布団、蚊取り線香、手水鉢、茶室、坪庭。みんな良い。

帰りしな、受付の女性にお礼を言うと

「年中無休で、元旦から開けてますので、またおこしやす。おおきに!」

と、柔らかい京言葉で応えてくれた。

何だかこのお寺が一番良かったような気がする。

帰り道、お寺の塀沿いに珍しいアジサイが咲いていた。まだ三時半だった。

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(柏葉アジサイと言うのだそうです)

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コメント

モーツアルトさん。

素敵な時間を過ごされましたね。
読み進んでいくうちに,
そこに自分も行って座っているような気分になりました。
お茶室の炉の切り方もしゃれていますし,
丸窓の障子で切り取られたお庭も美しい…
もしも京都に行くことがあったら
是非うかがってみたいです。
ご紹介いただいてありがとうございます。

投稿: a-kaki | 2017年7月10日 (月) 00時14分

おはようございます。

>またおこしやす。おおきに

いいなぁ、京都!
この一言で、うっとりしてしまいます😆

投稿: たろ | 2017年7月10日 (月) 07時16分

a-kakiさん、こんにちは。

>そこに自分も行って座っているような気分になりました。

そうなんですか!! うれしいです。
人が少ないせいか、落ち着く場所です。時々、住職が作務衣を着て庭を掃除してました。

>もしも京都に行くことがあったら
是非うかがってみたいです。

そうですね、是非。東福寺のついでに拝観されたらいいかもしれません。

投稿: モーツアルト | 2017年7月11日 (火) 11時38分

たろさん、こんにちは。

>この一言で、うっとりしてしまいます

そうなんです。京言葉は独特ですからね。きちんと話せる人が少なくなりました。それだから、たまに耳にすると何だか嬉しくなります。
京言葉に限らず、地方独特の言葉って、それぞれ味があって良いですね。

投稿: モーツアルト | 2017年7月11日 (火) 11時43分

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