雪舟の庭
「芬陀院(ふんだいん)」と言う。これも東福寺の塔頭の一つだ。
お寺は参拝客が誰も居なくてひっそりとしていた。
玄関に入ると、女性が掃除機をかけており、僕らを見て慌てて掃除機を止め、
「あらあら、失礼しました。ようおこしやす。どうぞ、どうぞ」
と、気さくで軟らかな京言葉で挨拶してくれる。
二人で600円。ここの拝観料が一番安い。
本堂の長い縁側。その向こうに枯山水の庭園が。
等間隔で開けられた障子の間には、座布団が2つずつ置かれていた。暫くの間、参拝者は僕ら以外誰も居ない。
時折、枯山水の庭から涼しい自然の風が吹く。長い縁側には等間隔に蚊取り線香が置いてある。うっすらと煙が上がり、懐かしい香りがする。
煙が揺れ、また真っ直ぐ上がる。その度に涼しさを味わう。
一人、二人、参拝客がやってきたが、みんな静かだ。
茶室が二部屋。その横には坪庭。窓からは、掛け軸状に切り取られた障子の間から、枯山水の庭が見える。
手水鉢の一輪挿しが涼しげに咲いていた。
入り口で頂いた案内によると、この庭は雪舟が作庭したもので、折り鶴を表現した石と亀を表現した石が置いてあると説明にある。
亀はすぐに分かったが(「頭を立てて泳いでいる様子」というのは妻に教えてもらった)、折り鶴はよく分からなかった。「こちらから見たら折り鶴よ」と妻が教えてくれた。なるほど、方向を変えると折り鶴に見える。
雪舟さんはそのへんも色々と考慮して作庭したのだろう。やはりただ者ではない。
(手前が頭で、何となく折り鶴に見えませんか?)
いつの間にか、このお寺で随分時間を過ごしたようだ。数人居た参拝客も居なくなり、また僕ら二人になった。
少し狭いけど心落ち着く庭園、二つずつ並んだ清潔な座布団、蚊取り線香、手水鉢、茶室、坪庭。みんな良い。
帰りしな、受付の女性にお礼を言うと
「年中無休で、元旦から開けてますので、またおこしやす。おおきに!」
と、柔らかい京言葉で応えてくれた。
何だかこのお寺が一番良かったような気がする。
帰り道、お寺の塀沿いに珍しいアジサイが咲いていた。まだ三時半だった。
(柏葉アジサイと言うのだそうです)
| 固定リンク
「料理・グルメ」カテゴリの記事
- 惣菜パン作り(2021.05.02)
- 晴れ、ときどき巻き寿司(2020.05.03)
- 鯖そぼろ(2020.04.02)
- 巻き寿司の魅力(2019.12.13)
- 初めての石巻~美味しいもの編~(2019.08.25)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
モーツアルトさん。
素敵な時間を過ごされましたね。
読み進んでいくうちに,
そこに自分も行って座っているような気分になりました。
お茶室の炉の切り方もしゃれていますし,
丸窓の障子で切り取られたお庭も美しい…
もしも京都に行くことがあったら
是非うかがってみたいです。
ご紹介いただいてありがとうございます。
投稿: a-kaki | 2017年7月10日 (月) 00時14分
おはようございます。
>またおこしやす。おおきに
いいなぁ、京都!
この一言で、うっとりしてしまいます😆
投稿: たろ | 2017年7月10日 (月) 07時16分
a-kakiさん、こんにちは。
>そこに自分も行って座っているような気分になりました。
そうなんですか!! うれしいです。
人が少ないせいか、落ち着く場所です。時々、住職が作務衣を着て庭を掃除してました。
>もしも京都に行くことがあったら
是非うかがってみたいです。
そうですね、是非。東福寺のついでに拝観されたらいいかもしれません。
投稿: モーツアルト | 2017年7月11日 (火) 11時38分
たろさん、こんにちは。
>この一言で、うっとりしてしまいます
そうなんです。京言葉は独特ですからね。きちんと話せる人が少なくなりました。それだから、たまに耳にすると何だか嬉しくなります。
京言葉に限らず、地方独特の言葉って、それぞれ味があって良いですね。
投稿: モーツアルト | 2017年7月11日 (火) 11時43分